聴いていますか? 今年の良かった音楽です。リリース順。
Best Albums
Kassa Overall / I Think I’m Good
ジャズドラマーであると同時にMCでもあり、ジャズとヒップホップを融合させたサウンドが素晴らしいニューヨークの「バックパック・ジャズ・プロデューサー」カッサ・オーバーオールのニューアルバム。歌モノとしてもジャズとしてもヒップホップとしてもエレクトロとしても豊かに聴ける懐の深い一枚。繊細さと力強さが同居した1曲目「Visible Walls」や、アメリカの刑務所システムについて歌った4曲目「I Know You See Me」が良い。
Thundercat / It Is What It Is
ロサンゼルスの天才ベーシスト、サンダーキャットの新作。大ヒットした前作『Drunk』は個人的にはハマらなかったのですが、今回はバッチリとフィットしたのが不思議。レーベルメイトのルイス・コールへの愛を歌った3曲目「I Love Louis Cole」やポジティブなパワーに溢れた7曲目「Funny Thing」も良いですが、やはり9曲目「Dragonball Durag」が素晴らしい。ドラゴンボール!
Tom Misch & Yussef Dayes / What Kinda Music
『Geography』で衝撃のデビューを飾ったプロデューサーのトム・ミッシュと、『Black Focus』が高い評価を受けたジャズドラマーのユセフ・デイズ。サウスロンドンのジャズシーンを象徴するようなコラボレーションによる一枚。感動的な1曲目「What Kinda Music」を筆頭に、タイトなドラムサウンドを中軸に据えて展開されるジャズセッションがかっこいい。
Four Tet / Sixteen Oceans
今年も絶好調だったUKのエレクトロニック奇人フォー・テットのニューアルバム。1曲目「School」からもう誰もついて来れないエレクトロニカとミニマルハウスの融合という感じで、ダンスフロアに気軽に赴けなくなった人類が家で穏やかにエレクトロニック・ダンスフロアを顕現させるのにとても最適。電子音楽最新形。
Dinner Party / Dinner Party
テラス・マーティン、ロバート・グラスパー、9thワンダー、カマシ・ワシントンの4人からなるアメリカジャズ・ヒップホップシーンの大乱闘スマッシュブラザーズ状態のディナー・パーティー。最高の夜のサウンドトラック1曲目「Sleepless Nights」がとにかく素晴らしい。気怠い3曲目「From My Heart and My Soul」も休日に合う。
Theo Parrish / Wuddaji
デトロイトの偉人、セオ・パリッシュのニューアルバム! ソウルシンガーのモーリサ・ローズをフィーチャーしてディープに展開する3曲目「This Is For You」が珠玉の一曲。複雑なグルーヴとベースラインがたまらない1曲目「Hambone Capuccino」など、ジャズやアフロビートの匂いを感じる極上のデトロイト・ハウスです。
Laraaji / Moon Piano
ニューエイジ、アンビエントの行ける伝説ララージ師匠。今年はピアノ三部作をリリースしましたが、そのうちのふたつめのこれが一番しっくりきました。ステイホームの夜に相応しい、窓から眺める月の音楽。静かに光る1曲目「Prana Light」、ドラマチックな4曲目「Quiet Journey」などが特に素晴らしい。
花譜 / 魔法
今年もパーフェクトな楽曲群と、アフターエフェクトの天下一武闘会めいていたステージ演出によるオンラインライブで強さを見せつけた神椿レコードの筆頭プロジェクト。なによりもその中心にいる天才シンガー・花譜は、すでにベテランアーティストの風格すら漂っていて凄まじい。テレビアニメ『ブラッククローバー』のEDテーマである3曲目「アンサー」、渋谷PARCO前のギャラリーで展開された花譜展のテーマ曲である現代渋谷ソング4曲目「私論理」など名曲揃い。宇佐崎しろ先生による書き下ろしイラストジャケのβもおすすめです。
https://kamitsubaki.booth.pm/items/2436558kamitsubaki.booth.pm
https://kamitsubaki.booth.pm/items/2436583kamitsubaki.booth.pm
Best Singles / EPs
理芽 / 食虫植物
花譜に続く神椿レコードの新鋭・理芽と、作曲家・笹川真生によるヒリつくような1曲が、TikTok で一気にバズって開花したという奇跡。YouTube 再生回数は2000万回を超えていわゆるバーチャルYouTuberシーンでは最大の再生回数を叩き出し、花譜と並んで完全にキャズムを超えてしまった印象。神経症的なMVと、スピーカーを破壊する勢いのサブベースが素晴らしい。
Nachtbraker / Fatoe Morgana
アムステルダムの敏腕DJ/プロデューサーの可愛らしくて骨太なディープハウス。音楽性が高く、うねるベースラインとフリーキーな上モノがマッチしていてかっこいい。早くDJでかけたい。
Laurence Guy / The Sun Is Warm And Directly Above You
ロンドンのモダン・ジャジーハウス・プロデューサー、ローレンス・ガイの新作。ハウスビートとピアノとヴォイスループの組み合わせが泣ける1曲目「Untitled Needs」がとにかく完璧。
Alfa Mist / On My Ones
ロンドンのジャズ・ピアニスト、アルファ・ミストによるピアノ・ソロEP。ダークだけど暗くなりすぎない、哀愁を誘う1曲目「High Risk」、ミニマリズムを感じる3曲目「L4」などとても良い。
Jimpster / One EP
〈Freerange〉のボス、ジンプスター。最近もう出す曲出す曲、全部良いということになっているのですが、こちらはヴォーカルをフィーチャーしてじわじわとビルドアップしていくディープハウス。イチバン、ナンバーワン!
Roman Flügel / Garden Party
ジャーマン・エレクトロのベテラン、ローマン・フリューゲルの、もろディスコな1曲。やっぱり時代はガーデンパーティーですよね、密にならないように……。シンセのメロディーがめちゃくちゃ泣ける。
Claptone & Mylo / Drop The Pressure
マイロの2004年の超名曲を、ドイツの覆面DJクラップトーンがカバー。ちゃんと今っぽい音になっていて良い。
Henrik Schwarz / Together EP
ドイツのディープハウスの天才ヘンリク・シュワルツの久々の新曲が〈Innervisions〉から。ゴシックな感じのコーラスを使って上げていく壮大な感じの一曲で、こういうのは広いフロアで聴きたい。
India Jordan / For You
ロンドンのDJ、インディア・ジョーダンによる、レイヴ!レイヴ!レイヴ!という感じのBPM速めの祝祭的な2曲目「For You」がとにかく最高なEP。ハッピー・ハードコア! ジャケはロンドンの著名なクィア・クラブ「Dalston Superstore」。ノンバイナリーをカムアウトしたジョーダンの力強い祝祭の調べが感じ取れる。
박혜진 Park Hye Jin / How can I
2020年のベストトラック!な1曲目「Like This」含む、韓国ハウスシーンのライジングスター、パク・ヘジンの新作EP。ドリーミーで瞑想的、自らのヴォーカルを乗せた蠱惑的な最高のハウス。ジャケもMVも、すべてが最上級。天才。こういう瞬間があるから、音楽を聴くのはやめられない。
電気グルーヴ / Set you Free
Denki Groove is Back! フジロックのヘッドライナーというこれ以上ない形で活動を再開するはずだったが、残念ながら延期となり、YouTube でフジロックの過去アーカイブを放送する企画のラストでMVが公開された新曲。釈放!「Fallin' Down」や「Tropical Love」以降の電気印といった感じの浮遊感のあるエレクトロニック・ポップ。MVがすごく良い。ストリーミング・ライブ「From The Floor」も大変素晴らしかったです。一生ついていきます。
Robert Glasper feat. H.E.R. & Meshell Ndegeocello / Better Than I Imagined
現代最高峰ジャズピアニスト、ロバート・グラスパー。若き天才R&Bシンガー、H.E.R.。ネオ・ソウル・シンガー/ラッパー/ベーシスト、ミシェル・ンデゲオチェロ。アメリカの才人3人が集まって歌う、黒人の愛の価値と美徳への熱烈な献身。2020年を象徴する1曲。
Kizuna AI × 花譜 / 愛と花
猪木と馬場、王と長嶋、キズナアイと花譜。バーチャルシーンの二大巨塔のコラボを川谷絵音の音でまとめた1曲目「ラブしい」で、この二人の声の違いを楽しみましょう。MVを見てるだけで泣ける。ありがとう2020年。
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Carl Craig & Moritz von Oswald / Attenuator
テクノの偉大な神様たち、カール・クレイグとモーリッツ・フォン・オズワルドによる12年ぶりのコラボレーション。ジャズ・フレイヴァー溢れるデトロイト・テクノな「Carl Craig Version」、それをダブテクノに落とし込んだ「Moritz von Oswald Dub」、いずれも素晴らしい。
Thundercat / Fair Chance (Floating Points Remix)
Best Albums でも挙げたサンダーキャット『It Is What It Is』収録の「Fair Chance」の、フローティング・ポインツによるリミックス。サンダーキャットとフローティング・ポインツの組み合わせで良くならないわけがないのだが、それにしても良い。ジャズ、ソウル、ハウス、テクノ。ここにはすべてがある。
バックナンバー
去年までのものは以下(2016年は書いていませんでした)。
2019年の良かった音楽 - From The Inside
2018年の良かった音楽 - From The Inside
2017 Best Music - From The Inside
2015年、音楽ベスト30 - From The Inside
2014年、音楽ベスト10 - From The Inside
2013年、音楽ベスト10 - From The Inside
2012 Best Music Top10 - From The Inside
2011 Best Music - From The Inside