アルバムもEPもごちゃ混ぜのディスク単位で10枚。
それでは来年も、よい音楽を。
10位
▽ Moritz Von Oswald Trio / Blue [Honest Jon's]
Moritz von Oswald、Max Loderbauer、Vladislav Delayの3人組ベルリン・アンダーグラウンド・スーパーグループ、コンスタントに作品を発表してくれて嬉しいですね。今年はこのEP1枚だったけど、相変わらずディープ・ミニマル・ダブの極北という感じで、永遠に聴き続けていられる音楽だなあと心から思います。
iTunes、ディスク単位だとなぜか1500円と異常に高くなっているので、Beatportなど他の手段で購入することをお勧めします。
BeatportでのHonest Jons RecordsからのBlue
Latest 100 arrivals : Honest Jon's Records
9位
▽ John Beltran / Amazing Things [Delsin]
デトロイトのベテランJohn Betranによるオーガニック・アンビエント・エレクトロニカ。特にエモーショナルな2曲目「Clouds Pull」が素晴らしすぎて目玉が飛び出ます。ふわふわしたエレクトロニカな3曲目「Het Leven Is Mooi」、夏に聴きたい切なさ満点の4曲目「Our Second Summer」あたりも良い。
このあまりにも夢心地のサウンドスケープがどのように生み出され得るのか。この男、相変わらず底が知れません。
BeatportでのDelsin RecordsからのAmazing Things
http://www.delsinrecords.com/release.php?idxRelease=3313
8位
▽ Todd Terje / Spiral [Olsen]
今年「Standbar」というアンセムを生み出したノルウェーのディスコ野郎Todd Terje、年末にドロップされたこちらの方が実は好みです。キラキラしていてメランコリックなA面「Spiral」も、ただひたすら直線的に直球ど真ん中を狙ってくるB面「Q」も、いずれも最高です。
かつてはリエディットでその名を轟かせていたToddですが、オリジナル・ワークでもこんなにも超弩級のディスコ・チューンが作れるのかと心底驚きました。世界は明るい。
BeatportでのOlsen RecordsからのSpiral
https://itunes.apple.com/jp/album/spiral/id762519887?i=762519897&uo=4&at=10lc52
7位
▽ Mark Ernestus Presents Jeri-Jeri / Ndagga Versions [Ndagga]
2人のBasic Channel、それぞれの活動は本当に面白い。Moritz von Oswaldがジャズの香りのするダブ・ミニマル道を行く中、もう一方のMark Ernestusはセネガルのサバール・ドラムの伝承者たちと出会い、アフロ・ファンク・ドラミング・ユニットを生み出していた! 打楽器奏者たちによるビートのアンサンブルを、Mark Ernestusがパーフェクトな音響処理でパッケージング。これこそが音楽だ!
ちなみにフジロックで見たJeri-Jeriの皆さんのライブ・パフォーマンスもめちゃくちゃカッコ良かった。太鼓は正義だ。ボーカル入りの『800% Ndagga』と、ダブ・バージョンの『Ndagga Versions』の2枚がリリースされていますが、ライブなら前者(ボーカル入り)、家で聴くなら後者ですね。
BeatportでのNdaggaからのNdagga Versions (Mark Ernestus Presents JeriJeri)
Ndagga Versions - Ndagga
6位
▽ Joris Voorn / Ringo [Green]
オランダのテクノ・マイスターJoris Voorn、久々<Green>からのリリースは、心掻き乱す切なさ乱れ打ちテック・ハウス! 短いシンセのリフが、やがてメロディーを形作っていくという、ダンス・ミュージックとして、またエレクトロニック・ミュージックとして考えうる最上の展開。至高の仕事ですわ。
タイトルは「林檎」なのか。子どもから見た世界の在り方を映し出したかのようなPVも見事です。
BeatportでのGreenからのRingo
http://www.jorisvoorn.com/ringo-out-now/
https://itunes.apple.com/jp/album/ringo-original/id699250769?i=699250851&uo=4&at=10lc52
5位
▽ Isolée / Allowance [Pampa]
Isoléeの久々の新曲は、絶好調<Pampa>からドロップ。とにかくタイトルトラック「Allowance」である。人の感情を揺さぶるためだけに存在するようなこの音の塊は、一体どうしたことなのか!? 太いベースとシンセで繰り広げられる夢の世界に打ち震えるべし。
地味に裏面の「Wobble」もかっこいい。引っ掻いたようなシンセが反復する良質テクノ。
BeatportでのPampa RecordsからのAllowance
http://www.pamparecords.com/pampa013-isolee-allowance/
4位
▽ DJ Koze / Amygdala [Pampa]
2012年末に投下された素晴らしいトラック、Matthew Herbert「It's Only (DJ Koze Remix)」以降、本当にこのDJ Kozeと<Pampa>は絶好調でした。そんなKozeのアルバムもまた、絶好調。Koze節としか言いようのない渇いたビートとスネアに、ApparatやMatthew Dearが絡み、ボーカルが上級を浮遊していく。ハウス、ミニマル、エレクトロニカ……落ち着いていて、深い夜を思わせるインテリジェントな音の旅路は、まさに桃源郷そのものです。
いま最も勢いのあるテクノ・アーティストは、DJ Kozeなんじゃないだろうか……そんなことすら思った2013年でした。感服。
Amygdala [Pampa Records] :: Beatport
http://www.pamparecords.com/pampacd007-dj-koze-amgydala/
3位
▽ Kaito / Until the End of Time [Kompakt]
現代テクノ最重要レーベル、ケルンの<Kompakt>にとって、2013年は設立20周年という記念すべき年でした。そんな年に、Kompaktに所属する唯一の日本人、Hiroshi WatanabeことKaitoのニューアルバムがリリースされたこと、そしてその内容がこれまでのKaitoから一歩先へと進んだ形であったことは、とても喜ばしいことだと思います。Kaitoらしい力強いビートとトランシーな上モノという点はより洗練され、さらにシリアスに、さらにソリッドに、さらに美しくなったように思います。
アルバム冒頭を飾る「Sky Is The Limit」、超直球Kaito節な7曲目「Star Of Snow」、新境地とも呼ぶべき9曲目「Until The End Of Time」など、どの曲もあまりにも上質です。
2位
▽ 電気グルーヴ / 人間と動物 [Ki/oon]
こんなにも愛おしいエレクトロニック・ポップが生み出されるなんて……と感動を禁じ得ません。石野卓球とピエール瀧を人間国宝にすべきでは?
『20』の延長線上にある自由でポップな歌もの路線と、イタロ・ディスコちっくなサウンド、そして『J-POP』『YELLOW』からさらに進化した「意味のない、でも意味をとろうとすることもできる、その上でやっぱり意味のない気持ちの良い歌詞」が高次元で融合した、素直に「聴いていてとても楽しいアルバムですね!」と言える1枚です。すごいよ、なんでこんなものが作れるんだよ。特に超絶メランコリックな5曲目「Slow Motion」からドリフネタの6曲目「Prof. Radio」、アルバムバージョンになってさらにカッコ良くなった7曲目「Upside Down」を経て、「中身は無いでしょう/でも何かみんな歌うでしょう」と高らかに宣言するトランシーな8曲目「Oyster (私は牡蠣になりたい)」への流れは発狂もの。ガレキのバンドの意味の無い歌を聴き続けてきて、本当に良かった……。
https://itunes.apple.com/jp/album/slow-motion/id602912051?i=602912357&uo=4&at=10lc52
https://itunes.apple.com/jp/album/prof.-radio/id602912051?i=602912356&uo=4&at=10lc52
https://itunes.apple.com/jp/album/oyster-siha-mu-lininaritai/id602912051?i=602912359&uo=4&at=10lc52
1位
▽ Graze / Edges [New Kanada]
1曲目「Skip/Crush」の圧倒的なインパクトに、聴いた瞬間、電流が流れました。こういう瞬間があるから、音楽を聴くのはやめられません。何も言わずに、良いスピーカーかヘッドフォンをつないで、再生してください。それですべてが分かるから。PVもかっこ良すぎる。なんだこれ……。
ミニマル/テクノ/ハウスのAdam Marshallと、ダブステップ/ガラージュ/ブロークン・ビーツのChristian Andersenによるこの新生ユニットの生み出す楽曲群は、現在進行形のテクノとベース・ミュージックの高次元な融合を目指したものと言えるでしょう。ハードで、力強く、すごく踊れて、でもベースっぽさもあって、少し切ない。新しい音楽が生まれる瞬間に立ち会えるということは、本当に幸せなことだと、そう思いませんか?