水谷フーカ『満ちても欠けても』、良いものをつくるひとびと

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水谷フーカさんはとても良い漫画家さんです。大好きです。『GAME OVER』を初めて読んだときは他人事とは思えずに悶え転がったものですし、『14歳の恋』は毎回毎回もうどうしていいのやらみたいな感じで赤面していますし、『ロンリーウルフ・ロンリーシープ』は僕のストライクど真ん中で超絶ニヤリングしました。あたたかい物語を描くのが得意な、ステキな漫画家さんです。

最新作『満ちても欠けても』は講談社Kiss連載=20代OL向け漫画です。ご存じの通り僕は20代OL(みたいなもの)なので完璧にターゲットですね!

本作は、あるラジオ局の人々にスポットを当てたオムニバスストーリーです。人気の深夜ラジオ番組「MNM(ミッドナイトムーン)」制作スタッフが物語の中心で、アナウンサー、ミキサー、局内カフェの店長、新人アナ、放送作家、そして鬼ディレクター、と1人ずつ主人公が交代していきます。

深夜ラジオというメディアには、独特の空気が流れていると昔から思っています。テレビともインターネットとも異なる、言葉と音で作られた不思議な媒体です。そんな不思議な媒体で良いものを作ろうと奮闘し、ものを作る過程で自らの人生をラジオに重ね合わせていく、そして何より「ラジオが大好きだ」と堂々と語る彼ら彼女らの姿は、とてもカッコ良くて、嫉妬を覚えてしまいそうです。

僕は20代OL編集者です。彼ら彼女らの、物語の中での言葉ひとつひとつが、心に突き刺さります。良いものを妥協無く作ろうとする姿は尊い。その尊さを、忘れてはいけない。

裏表紙に書かれているところによると、MNMは作中世界で月曜から金曜の23時-25時に放送しているそうです。同じ時間帯、深夜にゆったりと読むのがオススメです。ちょうど、ラジオを聴くように。

『満ちても欠けても(1)』(水谷 フーカ)|講談社コミックプラス