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紅玉いづき×HERO『青春離婚』、伝統的なフレームワークに紛れ込んだ現代性


青春離婚 (星海社COMICS)

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『青春離婚』HERO 原作/紅玉いづき | 最前線 - フィクション・コミック・Webエンターテイメント

原作は『ミミズクと夜の王』の紅玉いづき、作画は『堀さんと宮村くん』のHERO。星海社のWebサイト「最前線」で連載されていた同作が単行本化されました。

同じ「佐古野」という名字を持った同じクラスの高校生男女の物語です。同じ名字ゆえに「夫婦」とクラス内で称される2人、“奥さん”の方はそれに戸惑い、“旦那さん”の方はうまく逃げます。教室という狭い水槽で上手に泳げなかった“奥さん”は、“旦那さん”から上手な息の仕方を教わります。

こうした教室内の「うまくいかなさ」は伝統的なモチーフですが、紅玉さんはここに一粒、現代的な意匠を紛れ込ませます。“旦那さん”は趣味でスマートフォンアプリの開発をしており、そのアプリに使うイラストを”奥さん”に依頼するのです。こうして生まれた時間割アプリのヤギのキャラクターは、夫婦の生み出した子どもとしての意味を持ち始めます。

伝統的なモチーフに現代的な意匠を紛れ込ませるという手法は、作画レベルでも実践されています。Webコミック出身であるHEROさんならではの、そして本作自体がWebサイトで公開されたからこそのギミック、すなわち「縦に連なる横長の4コマ構成」です。

HEROさんはもともと『堀さんと宮村くん』で4コマ漫画のフレームを使用していましたが、pixivで不定期に公開した短編ではそれを拡張して「横長のコマを縦に並べていく」というフレームを採用しました。これは「上から下へスクロールしていく」Webページというメディアに適応した表現手法であり、極めて興味深い事例だと考えます。

7と嘘吐きオンライン(前) by HERO on pixiv

イラストコミュニケーションサービス[pixiv]

『青春離婚』でもこのフレームが使われています。メディアに合わせて表現の形が変容するという非常に分かりやすい事例であると同時に、その大元が伝統的な「4コマ漫画」であったということもまた重要なポイントです。伝統的な「思春期の生きづらさ」に「アプリ開発を通じて一緒にものを作り出す」という要素を混ぜ込んだこと、伝統的な「4コマ漫画のフレームワーク」に「横長のコマを縦に並べていく」という要素を組み合わせたこと、原作と作画の2重のレベルで、本作は「伝統的なフレームワークに現代的な意匠を紛れ込ませる」という行為が行われています。

物語も、見た目も、少し目新しくて、でもどこか懐かしい。そういう作品に仕上がっていると思います。まあ結局のところ「主人公2人とも可愛すぎるので早く結婚しろと思ったら最初から“夫婦”だった」という、そういう感じを楽しめば良いんじゃないでしょうか。はい。

メテオ・スカーレット|小説書き 紅玉いづき 個人サイト
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