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Ubique Media Daemon

2015年、漫画ベスト50

comic

今年は過去2年に比べて、あまり漫画が読めませんでした。来年はもっと読みたいですね。特に良かったもの上位50作品について書きます。選出条件は「2015年1月1日から2015年12月29日までに商業流通で単行本が刊行された新作」です。つまり同人誌やKDPは含みません。

2013年と2014年の様子はこちら。

minesweeper96.hatenablog.com

minesweeper96.hatenablog.com

では50位から。

第50位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4592710843/minesweeper96-22/

▽ panpanya『枕魚』

『足摺り水族館』『蟹に誘われて』と名作を排出し続けてきたpanpanyaさんの新作。大部分が「楽園」「WEB楽園」に収録された新作ですが、一部過去の同人誌からの再録もあり、本書で最もスパークしているのが最古である2009年の「地下行脚」であるという点は見逃せません。夢と現のあわいを彷徨う筆者の作風の中でも一際輝く新宿駅の地下迷宮は、重苦しく虚実入り交じる世界とコミカルな人間というバランスが完璧と言ってよく、意識を遠くまで連れていってくれます。

一方で、2014年の作品「雨の日」がそれに匹敵する陰鬱さとコミカルさを描き出しており(重苦しい雨の中で立つカエルがとにかく可愛い!)、今後果たしてどんな世界に連れていってくれるのか楽しみでなりません。願わくば、最近の短めの作品ではなく、少し長めの作品を多く読みたいと思います。

SURMICLUSSER

第49位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00TGX7WC6/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B013JN8VB4/minesweeper96-22/

▽ 山本直樹『レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ』(1) (2)

1972年に突入し、「最後の60日」と改題され1巻から仕切り直しとなった『レッド』。総括の名の下に、ただひたすら無意味に人が死んでいくミニマリズムは健在ですが、そんな中でオルグ及びカンパ活動のために東京に旅立った荒島が、人が死んでいった記憶と東京の風景とを見比べて逃亡への想いを募らせていくシーンは胸に迫るものがあります。

次に総括を突き付けられるのが誰なのか、読者は(史実という意味でも、また画面上に浮かぶ数字からも)知っていますが、どのようにして総括を要求されるのかはもはや人の理解を超えており、目眩がします。

物語は1月18日まで進行しました。あさま山荘まで、あと1ヶ月。

レッド / 山本直樹 - イブニング公式サイト - モアイ

第48位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0166JREV6/minesweeper96-22/

▽ 西尾雄太『アフターアワーズ』(1)

夜通し開かれることが多いクラブパーティーにおいて、日の上がる明け方からの時間(およびその時間帯をメインに行われるパーティー)を「アフターアワーズ」と呼びます。パーティーフリークたちは日が昇るまで踊り続け、体力に自信の無い人(僕とか)は日が昇る前にクラブをあとにする。ひんやりとした空気と、人の少ない街。喧噪の先にあるこの瞬間のために、僕は夜通し踊るのかもしれません。

本作は「初めてクラブに来た女の子が、遊び慣れたお姉さんに引っ掛けられて、そのままパーティーに身を委ねていく」という筋書きの物語です。パーティーを作るとはどういうことか、DJやVJとは、なぜ人はクラブに集まるのか……。仲間たちとの明け方の渋谷の光景は、いつか見た景色。クラブに行ったことが無い、という人にこそ、読んでほしい作品です。

作品詳細『アフターアワーズ』西尾雄太 | 小学館の新青年コミック誌「ヒバナ」公式サイト

第47位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0157YIW1W/minesweeper96-22/

▽ 山川直人『写真屋カフカ』(1)

山川直人の絵と物語は、いつだってノスタルジーと「今を生きる者」の心地よい関係性を切り取ってくれます。本作は山川作品そのものとも言える「消えそうなものを撮影する写真屋」谷遠可不可(コクトー! カフカ!)による、山川さんらしい優しい作品です。

消えてなくなるものを記録に残すため、人は写真を撮る。よく記憶に残る方が大事だからと言われますが、僕は常々、写真は撮っておいた方がいいと思っています。記憶は曖昧だから、消えゆくものは形に残した方が良い。カフカはその重要さを教えてくれます。

「写真屋カフカ」 | ビッグ コミックス | 小学館

第46位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B010N2825O/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B019I5E32S/minesweeper96-22/

▽ 三部けい『僕だけがいない街』(6) (7)

(それほど意外ではなかった)真犯人の正体が明かされると共に、本作は最も重要な核心……つまり「なぜ真犯人はそのような人間になったのか」、そして「主人公はどうやって真犯人を捕まえ、問題を解決すべきか」という領域に入りました。今年刊行された6-7巻では、良く言えば丁寧に、悪く言えばゆっくりすぎるほどに、失われた記憶を紐解くように物語が進みました。愛梨という人物によって悟はすべてを自覚したように見えますが、自覚したが故に彼は愛梨に声をかけず、離れていきます。

かつて自分が選択した「ヒーローとしての道」は、どこにつながっているのでしょうか? おそらく来年には完結するでしょう。あとは風呂敷を畳むだけ。楽しみです。

コミック『僕だけがいない街』公式サイト|KADOKAWA

第45位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00XXOS52U/minesweeper96-22/

▽ 斎藤けん『かわいいひと』(1)

少女マンガがあまり楽しめない人生でした。なぜなのか考えてみたところ、少女マンガに出てくる男性があまり好みのタイプではないことが多いからではないか……と気付きました。Sっぽい感じとか王子様系とか俺様系とかが好きになれないんです……ごめんなさい……。そんな僕の好みはかわいい男の子です。つまり本作は僕のツボだったということです。

目つきが悪い花園くんは花屋さんで働く男の子です。目つきが悪くて怖がられ続けたので前髪が長いです。かわいい。女子大生の日和さんはそんな花園くんとお付き合いしていろいろあるというお話ではあるものの、基本的には花園くんがとにかくかわいいという話ですので頭をからっぽにしてみんなで花園くんを愛でような。はーかわいい。

かわいいひと by 斎藤けん|白泉社

第44位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00ZT6B374/minesweeper96-22/

▽ 野村宗弘『うきわ』(3)

浮気未満の物語、完結しました。野村先生の絵の上手さが際立つ最終巻です。夜、川辺で草の中に座る麻衣子さんのシーンは筆舌に尽くしがたい。

「浮気」と「浮き輪」のダジャレからすべてが構築されている、非常に完成度の高い作品です。溺れそうな世界で、人はどうやったら浮き輪を膨らませられるのかを描いた本作だけに、その結末は必然と言えるでしょう。浮き輪は自分で膨らませなければならない。近年でも稀に見る素晴らしい恋愛マンガでした。素晴らしい!

やわらかスピリッツ - うきわ

第43位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/419950432X/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4199504583/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4199504818/minesweeper96-22/

▽ わらいなく『KEYMAN』(8) (9) (10)

まさかここまで面白くなるとは……。魔術師と獣人と超人の入り乱れるアメコミ風警官バディマンガもいよいよ佳境。最初はコメディリリーフだったのについにKEYMAN化して美味しいところを全部持っていったピートとその恋人フロル、ボスだったはずが一番人間らしい存在だったフランク、過去の悪行(と母としての葛藤)がさらけ出されるネクロ、子どもができなかったが為に「親の心」が分からず苦悩するアレックスとサリー、生きていたボビーとそれを匿うキャバレーの子……と、これまでのありとあらゆるエピソードと登場人物が一本につながっていく様は見事という他ありません。

獣人差別という通底するテーマに、ネクロのKEYMAN/二重螺旋の研究がオーバーラップしていく中、やはり最終的に肝となるのはKEYMAN化してしまったボビーが人や獣人と共存できるのかという部分でしょう。バトラーとの決着よりも、実はそちらの方が重要だったりします。極上のヒーローコミックです。まだ読んでない人は一気読みしましょう!

KEYMAN|月刊COMICリュウ

第42位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00YGRDE10/minesweeper96-22/

▽ 石黒正数『それでも町は廻っている』(14)

亀井堂静と嵐山歩鳥との師弟関係を、それぞれ別の軸から切り取った第108話「続・夢現小説」(コミックスだと「続」が抜けている)と第111話「夢幻小説」が白眉。「似たもの」「似て非なるもの」をテーマにしたという今回は、亀井堂ファンとしてはたまらない1冊に仕上がっておりました。ということで「それ町」最新刊です!

それ町の最新刊が出るというのは、それだけでご褒美のようなものであり、1冊かけてたっぷりと石黒ワールドにひたれるのは幸福以外のなにものでもありません。かつて第96話「幽霊絵画」で歩鳥が出会った美術部員の室伏涼の名前が第108話で出てきたと思ったら本人も第113話で再登場(時系列的には108は113より後になる)して歩鳥と新しいコンビ感が出てきたりと、まだまだ世界が広がっていく様子を見せています。本作は時系列がバラバラにしてあることで有名ですが、歩鳥の高校3年間、あとどのくらい時間が残っているのでしょうか? 僕らはいつまでこの世界を楽しめるのか……。

少年画報社 / comics

第41位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00ZBU8QFU/minesweeper96-22/

▽ 清野とおる『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』(1)

天才・清野とおるが、さまざまな「おこだわり」を描く! ツナ缶と氷結、寝る、アイスミルク、ベランダ、白湯、内ポケット……などなど、常軌を逸した「おこだわり」たちと、それを(どうでもいい突っ込みで)盛り上げつつ魅力を読者に伝える清野先生の天才性に平伏す他ありません。読了後、金麦とポテトサラダをコンビニへと買いに走った僕を誰が責められようか!

ついにモーニング本誌に移籍しノリに乗っているおこだわりコミック、清野先生にしかできない狂気の世界を感じます。清野先生のマンガを読んでいると、いつも「こんな人がこの世には存在するのか……」「世界はなんて広くて豊かなんだ……」と哲学的な気持ちになってしまうのですが、僕だけでしょうか。

その「おこだわり」、俺にもくれよ!! / 清野とおる - モーニング公式サイト - モアイ

第40位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00XU0MVJA/minesweeper96-22/

▽ 架神恭介/横田卓馬『戦闘破壊学園ダンゲロス』(8)

完結! 1冊まるごと、両性院 vs ユキミ&黒鈴という美味しい展開。ユキミが「転校生の条件」を語りながら徐々に女性体になっていく様子は横田先生の漫画力の高さを感じずにはいられませんでした……。黒鈴の「災玉」発動シーンや、最高のラストシーンなど、1ページたりとも目が離せません。

もともとダンゲロスはネット上での多人数参加型シミュレーションゲームであり、そのメタ的な構造を漫画の中に落とし込んで分かりやすく展開させるという意味でも、素晴らしいコミカライズでした。

戦闘破壊学園ダンゲロス « ヤングマガジン公式サイト『WEBヤンマガ』

第39位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0197POM6Q/minesweeper96-22/

▽ 乃花タツ『なり×ゆきリビング』(1)

アッ、アアッ……アアー。同じ会社で働くふたりがひょんなことから一緒に暮らすことになるという何それなんのドリームなの? 天国なの? という感じでもう僕はアアー。天真爛漫な篠峰さんと、クールでできる女風だけど実は可愛らしい佐藤さんの、仲良く朗らかな日々を見ていると、僕は、僕はもう……。

別に百合ではないんだけど百合フィルターを通すとすごいです。いいよね……。篠峰さんのこと大切に思ってる佐藤さんいいよね……。アアー。

なり×ゆきリビング│漫画の殿堂・芳文社

第38位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00RSYSB3Y/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00U6780RM/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00YTN19K4/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B013DZ3NBG/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0166B6U0U/minesweeper96-22/

▽ 板垣恵介『刃牙道』(4) (5) (6) (7) (8)

「俺が守護らねばならぬ」……2015年、最も面白かった漢、本部以蔵。バキvs勇次郎というクライマックスを迎えてしまったバキシリーズの最新作は宮本武蔵が相手になったわけですが、そんなことよりもとにかく本部が面白すぎて毎週目が離せませんでした!!!

本筋の方は烈海王vs宮本武蔵のショッキングな展開だったわけですが、それはそれとして烈に「烈っつぁん…」と話しかける本部が良すぎる。そんな仲だったっけ? 勇次郎に鬼の顔を出させたこともあるし、柳を公園で圧倒していたし、やっぱり本部は強かったんだよ! 金竜山のことは忘れろ! 2016年も本部はやってくれる! やってくれるぞ!

刃牙道 第8巻 | 秋田書店

第37位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4063953491/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4063954218/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4063954846/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406395563X/minesweeper96-22/

▽ 赤松健『UQ HOLDER!』(6) (7) (8) (9)

本作は、なんというか、いろんな展開を行ったり来たりするなー、という印象の強い作品です。当初は雪姫と刀太の旅物語になるのかなと思っていた(しそれを期待していた)のですが、組織が出てきて、バトルっぽい展開が増えて、雪姫は出番が減って、僕はしばらく心を離してしましました。

ところがだ! 今年は雪姫の過去と刀太の物語に戻ってきまして、ちょうど9巻できれいに終わるという素晴らしい展開! とにかく雪姫と刀太が仲良くしてくれていれば俺はそれでいいんだ……いいんだ……という気持ちになりました。8巻ラスト「頭を撫でられるのは十八年ぶりだ」のシーン良すぎるでしょ……。最近はまたラブコメっぽい感じに戻ってきていますが、このふらふらした感じは、刀太という人物そのものでもあるなーと思うと、末永く見守ろうという気持ちになってきました。

マガメガ MAGAMEGA | UQ HOLDER!

第36位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B013VY4M1O/minesweeper96-22/

▽ コージィ城倉『チェイサー』(3)

手塚治虫を追いかける漫画も3巻目です。「アトム」や「鉄人28号」を見て自らもロボットアニメを考案し、ついにはアニメの下請けの仕事まで始める漫画家・海徳。ついには自身の漫画のアニメ化の話まで進むも、商業性と作品性の狭間で葛藤し……手塚を追い続ける男は、苦悩しながらも、彼自身、多くの漫画家やクリエーターに追いかけられ得る存在となっていきます。

自分も十分成功しているのに、海徳はまったくそんな意識を持ちません。なぜなら、目の前には手塚がいるから。「あいつはすごい」「あいつに勝ちたい」……羨望と嫉妬に塗れながら前に進む海徳の姿は、眩しい。

『チェイサー』コージィ城倉|試し読み|小学館コミック -ビッグスリーネット-[ビッグコミックスペリオール]

第35位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00VHVYOUI/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B011BANWHK/minesweeper96-22/

▽ 田丸浩史『ラブやん』(21) (22)

完結おめでとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!

いやあ……15年か……カズフサ良かったなあ……田丸先生のことだから終わり方ひどいかなって思ったら最高でしたね……カズフサ……カズフサにもハッピーエンドが来たっていうのに俺たちは……。

ラブやん / 田丸浩史 - アフタヌーン公式サイト - モアイ
『ラブやん』完結インタビュー 田丸浩史、次回作は“妖怪もの” | ORICON STYLE

第34位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B010PJKGDQ/minesweeper96-22/

▽ 迂闊『のみじょし』(1)

世はグルメ漫画の戦国時代。ありとあらゆる食べ物漫画が跋扈する中、お酒を美味しそうに飲む女性漫画というレッドオーシャンどまんなかっぽいところに直球ドストレートを投げ込んできて完璧な仕事をしてしまった迂闊先生のお酒を飲む女性漫画「のみじょし」だ。尊い。

主人公のみっちゃんはとにかくお酒およびお酒にあう食べものが大好きすぎて人生が楽しそうなので尊い。

竹書房4コママンガ誌オフィシャルサイト | 4コマ堂 » 『のみじょし』1巻、今週末7月4日土曜日発売迫る!書店特典出揃いました~

第33位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B015IS09XQ/minesweeper96-22/

▽ いがらしみきお『誰でもないところからの眺め』

「私」とは何か。『I』で「神様」を描いたいがらしみきおは、本作では「私」について描いています。肉体から自分が離れていったとき、残された「私」とは何か。

ラストで、まったく別の人間と化した登場人物達が遊動民として去っていく姿は、美しくもあり、恐ろしくもあります。それが救いなのだとすれば、しかし「私」の救いはどこにあるのか? どこか滑稽で、恐ろしい世界を描くいがらしみきおは、これからどこに向かうのでしょう。

『誰でもないところからの眺め』特設サイト - いがらしみきお/太田出版

第32位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B013A7GIEQ/minesweeper96-22/

▽ ZUN/春河もえ『東方鈴奈庵 ~ Forbidden Scrollery.』(4)

同人サークル「上海アリス幻樂団」が制作する弾幕シューティングゲーム「東方Project」。2015年はなんと20周年ということで、いろいろと激動だったことは記憶に新しいところです。そんな「激動」のひとつが、本作でした。

実に20年もの時を経て初めて明かされた主人公および作品世界の隠された設定は、界隈を混乱させ、多くの二次創作に影響を与えました。「人から妖怪になることこそが最大の罪」「博麗の巫女は、そのような人間を監視すること」……。では、巫女の近くにいつもいる、妖怪たちの不死性に興味を示し続ける普通の魔法使いとの関係性とは、いったい何だというのか! これほどの爆弾を投下するZUNと、それを圧倒的な画力で美しく描き出す春河もえという才能に畏怖する他ありません。

「東方鈴奈庵 ~Forbidden Scrollery.」作品情報|コンプエース

第31位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0154G92BW/minesweeper96-22/

▽ 窓ハルカ『俗の金字塔』

リイド社のWebコミックサイト「トーチweb」は今年、数多くの名作を排出しました。そんな中の1作が本作『俗の金字塔』です。

作者曰く「CLANNADの坂上智代をモデルにした」という少女・ゆかりと、その恋人である野中雪夜を中心とした、不可思議でアブノーマルだけど優しい物語が紡がれる本作は、いちいち不必要なネタや間合いを紛れ込ませながら面白おかしく進行します。ゆかりは良い女すぎる。

ちなみに窓ハルカ先生はトークイベントでお見かけしたことがあるのですが、ぶっ飛んだお方でした。

トーチweb 俗の金字塔

第30位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B014CKRI6M/minesweeper96-22/

▽ 雨隠ギド『甘々と稲妻』(5)

本作は一般に「子育て漫画」であり「おっさんと女子高生の漫画」であり「料理漫画」であると認識されているのだと思うのですが、実際のところ、これは「妻を喪った男の漫画」であり、「母を喪った少女の漫画」でもあったりします。普段はあまり表に出てきませんが、主人公の犬塚はどこかで亡き妻を思い返し、娘のつむぎは死を理解しきれないまでも「母はいない」という事実を少しずつ受け入れていきます。

つむぎは、母が入院しているという保育園の同級生を前にして言います。「つむぎの ママは… いない…。すぐるくんのママは びょういんに いるでしょ。あしたは びょういん いきなね」。そして、母の残したレシピを元に、犬塚はつむぎと料理を作る。「つくっちゃった! ママだっ」。料理のレシピという「作り方の型」は、その人がいなくなっても、その人を再現する役に立つ。何ものかを作るという行為と、そのレシピを通じて、人を喪っても、人を繋ぎ続けていくことができるとしたら、それはなんと幸せなことでしょう。本作を包む幸福な空気は、そのようにして生まれているのです。

甘々と稲妻 / 雨隠ギド - アフタヌーン公式サイト - モアイ

第29位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B017LG9JRK/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B017LG9JPC/minesweeper96-22/

▽ たかみち『百万畳ラビリンス』(上) (下)

イラストレーターたかみちさんによる、ゲーム空間ファンタジー! バグを見つけるのが得意な礼香は、共にゲーム会社でデバッグのアルバイトをしていた盾子と共に突然、木造迷路に迷い込む。果たして2人は脱出できるのか? というお話です。

日常生活の中の綻び=バグにこそ幸福を見出す主人公の異常な才能が、ゲーム的空間である迷宮の中で発揮されていく様は、痛快であると同時に、社会適応という言葉の儚さをも感じさせます。今ここからあっさりと旅立ってしまう在り方は悲しくもあり、希望でもあるのでしょう。上下巻で一気読みできる上質脱出コメディです。ゲーム好きにオススメ。

百万畳ラビリンス - pixivコミックで漫画を無料試し読み

第28位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B015W10A6A/minesweeper96-22/

▽ 小椋アカネ『彼女になる日』(2)

「男女比を一定に保とうとするため、女性が少なくなると一定数の男性が女性に変化(=羽化)する世界」という設定のもと、幼なじみの三芳君と間宮君のうち間宮君の方が羽化してしまったというところから始まった本作。好評につき2巻も刊行です。めでたい。

TSものの定番である「男だったはずなのに」という葛藤は1巻で終えておりまして、2巻は「『自分と父を捨てて別の男のところに行った大嫌いな母』とそっくりの外見になってしまった自分」という間宮の葛藤がテーマとなります。大嫌いだった母のようになり、いずれ三芳を裏切ってしまうのではないかと怯える間宮に対して、三芳の放つセリフは超イケメンなので必読。

小椋アカネ (@ogura_akane) | Twitter

第27位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4199504486/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4199504834/minesweeper96-22/

▽ ninikumi『シュガーウォール』(3) (4)

柚原と黄路による「恋愛版ゴジラ対キングギドラ」のような展開から一点、3-4巻は柚原の友人である武内と、彼に想いを寄せる美術部の八坂さんのお話に変わりました。全然違う話だー! 柚原のことが好きな武内を好きな八坂さん、という業の深いアレです。作者が描きたいものを描いてるんだなー、というのが伝わってくるような作品です。

真っ白できれいな武内の、その真っ白な世界を塗りつぶしたいという八坂さんの欲望に「わかる……ちょうわかる……」となってしまうのは仕方なかろうというもの。真っ白できれいな男は染めたいよな……わかる……。1-2巻よりだいぶまっとうで普通のラブコメになってると思うので普通に読めると思います……多分……。2人とも柚原と黄路ほどはぶっ飛んでないし……。

シュガーウォール|月刊COMICリュウ

第26位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B010PLSBHC/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B018LKMFU8/minesweeper96-22/

▽ 押見修造『ハピネス』(1) (2)

『惡の華』の押見修造先生の最新作は吸血鬼もの! 相変わらずの筆力でダークファンタジーを展開してくれている……くれているのだが!

問題は2巻の表紙になっている五所雪子さんだ。吸血鬼になってしまった主人公、巻き込まれる友人たち、襲いかかる謎の吸血鬼……といろいろあるわけですが、主人公を支える五所雪子さんがとにかく良すぎて他のことが目に入らない。今年最も可愛かったのが五所雪子さんであることに異論はないはずだ。なぜ、なぜ押見先生はこういうキャラを作るのがうまいんだ……ちくしょう……。

マガメガ MAGAMEGA | ハピネス

第25位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088803175/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/408880354X/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088804252/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088804856/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/408880581X/minesweeper96-22/

▽ 松井優征『暗殺教室』(13) (14) (15) (16)

「茅野の正体」という超弩級の仕掛けをぶちまけて歴史に残る伏線回収の匠の技を見せてくれた今年の『暗殺教室』。ジャンプの看板は伊達じゃない……という気分です。負けだ負けだ!

それに続く、殺せんせーの過去編も大変素晴らしいものでした。これまでにも幾度となく出てきた「教師」というテーマ、つまり「教えるとはどういうことか」のすべてが込められた過去編は、本作のすべてが込められた大切なエピソードでした。教えるとは、見ることである。では「見る」とは何か。少年少女の成長物語である(=少年漫画である)本作は、同時に、少年少女を導くものはどうあるべきか、という物語でもあります。

『暗殺教室』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト

第24位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091253997/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091262104/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091265707/minesweeper96-22/

▽ コトヤマ『だがしかし』(2) (3) (4)

大ブレイク! アニメ化決定! 最高の駄菓子漫画だ!

昨年「最大のサプライズ」と評した本作が予想通り大きな躍進を遂げた1年でした。「グルメ」と「ノスタルジー」と「うんちく」と「可愛い女の子」と「うすた京介直系のギャグ」を掛け合わせた悪魔合体のような作品であり、ありとあらゆる反則技が仕掛けられておりますが、やはりその根幹には「駄菓子への愛」と「ギャグ漫画としてのクオリティの高さ」が存在します。

さて、本作はサザエさん時空がごとく、ある夏休みの出来事を描いていますが、果たして今後、夏休みが終わるときは来るのでしょうか? 3巻では夏祭り編にて主人公・ココノツが将来について考え、4巻では補修編にてココノツに想いを寄せるサヤが「いずれココノツは漫画家になってこの町を出ていく」のだと気付きます。駄菓子屋さんという「過ぎ去った過去」の象徴を描く本作が、サザエさん時空に留まるのか、未来へと歩み出してしまうのか。いやまあそんなシリアスな漫画ではないんですけど。

『だがしかし』公式サイト|小学館

第23位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00UMMW0DQ/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0118WHYHU/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B017NDDC56/minesweeper96-22/

▽ 松浦だるま『累』(5) (6) (7)

顔面取り替え舞台女優ホラーも佳境。野菊によるニナ殺害、そして累による野菊との取り引きが今年のメインの流れでしたが、その裏で描かれた、羽生田と天ヶ崎、2人のおっさんの物語が大変グッときました。

小説版でも描かれた羽生田の透世への想いと、火傷を負った野菊へ人形以上の想いを抱いてしまう天ヶ崎。舞台女優の話のはずなのに、気付けばおっさん2人の生き方に目を奪われてしまっている……! なぜ……!

累 —かさね— / 松浦だるま - イブニング公式サイト - モアイ

第22位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B013OL5HBS/minesweeper96-22/

▽ 模造クリスタル『ビーンク&ロサ』

「おまえーっ」のコマで有名な「金魚王国の崩壊」の模造クリスタル先生の、マトグロッソでの連載が単行本に!

ゴミ山のキャピングカーに住むビーンクとロサ、「怪人」たちの組織、そして肉の描き方やバトル漫画の描き方を通じて、友達とは何か、家族とは何かを描く意欲作、のような気がします。恐らく。支離滅裂なサイドストーリーたちを交えて、カラッとクールに物語を進めていく独特のタッチは中毒性抜群。

『ビーンク&ロサ』が、本になりました。 | Matogrosso

第21位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091867693/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091871488/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091873685/minesweeper96-22/

▽ 柳本光晴『響~小説家になる方法~』(1) (2) (3)

変わり者の女子高生・鮎喰響の、天才小説家としての歩みを描く物語。本人も気付かぬ天才性を、編集者は、作家は、そして同級生は気付き始める……。

天才を描くのは一般的に困難であり、いかにしてそのリアリティを出すかが難しいところなのですが、本作は響の書いた小説の内容をほとんど一切出さずに、彼女の天才性(および異常性)だけを抽出することに成功しつつあります。それは、天才を描くのではなく、天才を見つけてしまった人間を描くことで達成されています(そういう意味で、本作は『チェイサー』によく似ています)。偉大な小説家の娘であり、自らも小説家デビューを果たさんとするリカが、同じ部活の部員である響の天才性に触れ、どのように折り合いをつけていくのか。天才の歩みはまだ始まったばかりです(何しろまだデビューしてない)。

[響 ~小説家になる方法~] 柳本光晴|試し読み|ビッグコミックスペリオール

第20位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309275753/minesweeper96-22/

▽ 森泉岳土『カフカの「城」他三篇』

フランツ・カフカの「城」、夏目漱石の「こころ」より“先生と私”、エドガー・アラン・ポーの「盗まれた手紙」、フョードル・ドストエフスキーの「鰐」。それぞれを16ページで漫画化するという異常な試みを、森泉岳土流の調理法で実践した作品。あらすじをなぞるのではなく、作品の核を抽出するような手法で、文学作品の解体と再構築を行っています。

特に「こころ」の躑躅のシーンが素晴らしい。見開きで燃えるように咲き乱れる躑躅が描かれます。「これは霧島でしょう」。

カフカの「城」他三篇 :森泉 岳土|河出書房新社

第19位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0154G92NU/minesweeper96-22/

▽ ドリヤス工場『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』

こちらは、水木しげる風の絵柄で描く漫画家ドリヤス工場が、太宰治「人間失格」、梶井基次郎「檸檬」、幸田露伴「五重塔」、トルストイ「イワンのばか」……などなどの名作群をだいたい10ページくらいで漫画化した作品。リイド社のトーチwebでの連載。

水木しげる絵による人間失格で幕を開けるインパクト抜群の1冊。坂口安吾「桜の森の満開の下」と、芥川龍之介「羅生門」、それぞれの老婆が水木しげる風で大変グッド。

トーチweb 有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。

第18位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00V9EO10G/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B013HJBZCW/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01914QMUC/minesweeper96-22/

▽ 押見修造『ぼくは麻理のなか』(5) (6) (7)

後をつけていた女子高生のなかに入ってしまった男の物語……だったはずです。ある朝起きたら、自分が備考していた女子高生・吉崎麻理になってしまっていた男、小森功。本当の麻理はどこに行ったのか、彼女を見つめ続けてきた同級生の柿口依と共に探し続ける旅は、今年、不思議な展開を見せました。

自分のことを麻理と同一視する周囲の目を嫌がりつつも、同時に麻理の記憶が身体の中から生まれてくることに戸惑いを隠せない小森。そして、自分(麻理)へ強い想いを寄せる依を好きだと言う小森。だが、麻理の記憶を思い出した小森は、麻理のなかから追い出されてしまう。……実際の小森は、小森の身体を持って現実に存在している。では、麻理のなかにいた小森は誰だったのか? 麻理はなぜ小森を見つめ続けていたのか? そして、依は、麻理に、そして小森に、何を思うのか。

今年、最も予想外な面白を見せた作品でした。7巻は特に素晴らしい。押見先生はやはりすごい。

株式会社双葉社 | 漫画アクション

第17位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883794156/minesweeper96-22/

▽ 神村篤『暖かい日陰に』

「第14回アックスマンガ新人賞奨励賞」を受賞し、47歳で漫画家デビュー。アックスからやって来た恐るべき新人です。

けして今風ではない絵柄に、SF的とも幻想的とも言える、詩のような物語。何よりも、彼の描く女性の目は、読む者のすべてを見透かすような、壮絶な恐ろしさと色気を漂わせています。前編を幻想的な世界で描いた「さかしまに」は見事。今年最も驚いた作品のひとつです。次の作品も早く読みたい!

青林工藝舎 アックスストア / 「暖かい日陰に」神村篤

第16位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091868541/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4091792049/minesweeper96-22/

▽ 谷口ジロー『千年の翼、百年の夢』

谷口ジローがルーヴル美術館を描く! 熱で朦朧とした中、ルーヴルを彷徨い歩き、サモトラケのニケに導かれながらゴッホやコローと出会い、美術史を旅していく。その姿が、谷口ジロー先生のあの独特の筆致で豪華に描かれていきます。なんて贅沢な美術体験! シュリー翼、古代エジプト美術の死と埋葬にまつわる作品群に囲まれての、最後の邂逅のシーンは必見です。

通常版の他に、オールカラーB5版の豪華版も出ていますが、僕は迷わず豪華版を買いました。一家に一冊。

[千年の翼、百年の夢] 谷口ジロー|試し読み|小学館コミック -ビッグスリーネット-[ビッグコミックオリジナル]

第15位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00TETJG76/minesweeper96-22/

▽ 押切蓮介『ピコピコ少年SUPER』

押切先生。押切先生……! いろいろあった押切先生ですが、いろいろあった中で同時進行で連載されていた本作は、ゲームありがとう漫画でありながら、最終的にゲーム漫画で大変なことになり糞袋中年になってしまう最終話を迎えます。しかし、その体験をこのように漫画にするモチベーション、そして、それでもゲームが支えてくれると確信する感動的なラストは涙無しには読めません。ハイスコアガールも無事、和解ということで、来年もご活躍を楽しみにしています……!

あと個人的には「純愛少年」の須藤さんに押切先生作品らしい女性の恐さが垣間見えて最高です。

ピコピコ少年SUPER - コミック | ぽこぽこ

第14位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B012FIY8T8/minesweeper96-22/

▽ 施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』(2)

名著礼賛漫画、まさかの2巻目! 読書嫌いだけど読書家に見られたい「バーナード嬢」こと町田さわ子と、その周囲の人物たちが織り成す「読書あるある漫画」なわけですが……2巻が……その……完全に……さわ子と神林の……百合漫画……。そういえば施川ユウキ先生は「サナギさん」という素晴らしい漫画も描かれていたし、こうなることは必然だったんですね……!

まあ冗談は置いておくとして、今回も表紙の村上春樹ネタを筆頭に、さまざまな読書あるあるが展開されるわけですが、中でもやはり最高なのが水嶋ヒロ「KAGEROU」ネタ。「なぜ2作目を書かない!? 水嶋ヒロ!」のシーンの心の叫びっぷりは爆笑ものです。

あとやっぱり神林はさわ子のことが好きすぎると思うんだよな……。

バーナード嬢曰く。 | 作品紹介 | 一迅社WEB

第13位

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▽ 朔ユキ蔵『帰ってきたサチコさん』

「別れと再会」をテーマにした短編が5編。特に表題作が圧倒的。1930〜40年代と2013年を交互に描写し、徐々に「主人公のサチコは10ヶ月前に1932年にタイムスリップし、そこで10年を生きた後、現代に帰ってきた(現代では10ヶ月しか経っていない)」という状況を明かしながら、理不尽な別れを意味あるものにするためにサチコの生きる現代まで生き続けた過去の世界の夫・マキオを、そして失ったものを取り戻すため夫と子どもを捨てて現代にも戻るも結局何も得られないサチコを、並行して描きます。

世界は理不尽な別れに満ちている。だから人は、それをせめて意味あるものにするために、再開しようと生きていく。その先にあるのはやはり理不尽であり、世界はそのようにできている。完璧です。

帰ってきたサチコさん | 小学館

第12位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00ZZCGNBI/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B019MDTOCU/minesweeper96-22/

▽ 山田参助『あれよ星屑』(3) (4)

焼け跡ブロマンス、今年もとても素晴らしかった! 物語は再び戦後に戻り、浮浪児たちや元特攻兵を、そして、主人公・川島の義姉と父を描きます。

作者自身が「誰も描いていなかったから描こうと思った」という戦後間もない時代の闇市を舞台とした本作は、戦争への価値表明を控えめにし、ただひたすらに、あるがままに「戦争の後の日本」を生々しく描きます。そこに生きる人々は、傷を負い、それでも前を向いて歩いている。清濁併せ吞む「生」そのものが、ここには描かれています。

義姉と父の物語はかなり辛いものがあるものの、4巻ラストでは底抜けに明るい舞台小屋の人々が登場し、また違った色合いを描いていくことを予感させます。川島の持つ闇が晴れる日は来るのか。

『あれよ星屑』 試し読み

第11位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B016CTNKPY/minesweeper96-22/

▽ 道草晴子『みちくさ日記』

リイド社「トーチweb」から、この記事で3作目。13歳の時に「ちばてつや賞ヤング部門優秀新人賞」を受賞するも、14歳で精神病院に入院、20歳まで入退院を繰り返した作者の半生を描いた4コマ形式の素晴らしい「日記文学」です。荒々しい絵のタッチと描き文字に騙される事なかれ。この作品の完成度の高さは尋常ではありません。絵のバランスと、色彩感覚がすごすぎる。

壮絶な日々の記録は、文学になり得る。それを自ら証明して見せた本作は、すべての少年少女が読むべき必読本と言えるでしょう! 個人的には、途中でおつきあいしていたという彼氏のQちゃんがまったく他人事に見えなくて困りました!(Qちゃんと別れてるシーンがすごいあっさりしてるのもリアルで勝手にダメージを受けました)

トーチweb みちくさ日記

第10位

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▽ つくしあきひと『メイドインアビス』(3)

現代ファンタジー漫画の最高峰! これさえ読んでおけば他はいらん!

地中奥深く伸びている縦穴の秘境「アビス」と、そのアビスを探検する「探窟家」と呼ばれる人たち。伝説の探窟家を母に持ち、自らも探窟家見習いとして訓練に励む主人公・リコは、アビスの中で記憶喪失の謎のロボット・レグと出会い、彼とともに穴の底を目指します。3巻では、毒と「上昇負荷(アビスの中では上昇することで身体や精神にダメージを負う)」を負ったリコと、それを救おうとするレグの前に、ケモノのような人物・ナナチが現れます。上昇負荷の実験体とされ「成れ果て」と化した過去を持つナナチは、リコを治療しながら、同じ成れ果てとなり自己を失った友人を殺してくれるようレグに依頼し……。

ケモノのナナチがとにかく可愛いけど物語的には大変ヘビーな絶品グロ系ファンタジー。作者の度し難い業の深さがそのまま作品に封じ込められており、合う人にはたまらない出来に仕上がっております。とにかくずっとナナチの死亡フラグが積み上がり続けており読むのが辛くて仕方ないのですがナナチは可愛い。

メイドインアビス / つくしあきひと / まんがライフWIN

第9位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088805569/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088805577/minesweeper96-22/

▽ 横田卓馬『背すじをピン!と 〜鹿高競技ダンス部へようこそ〜』(1) (2)

横田卓馬先生、ついにジャンプ本誌連載! 「痴漢男」「オナマス」そして「ダンゲロス」を描いてきたYOKO先生こと横田卓馬先生が、ついに……。

選んだテーマは「競技ダンス部」。いわゆる社交ダンスの競技バージョン。上品な大人同士の「踊り」としての側面と、情熱的なカップル同士の「ダンス」としての側面の両方を持つこのスポーツは、青春ものと、ドギツイ描写の両方を描いてきた横田先生だからこそ描けるフィールドだと感じます。なんの才能もない少年少女が、一歩ずつ練習しながら、普通に踊れるようになっていく……なんて、なんて素晴らしいことなのか!

早い段階で各キャラクターの人となりを読む者に刷り込みつつ、ダンスを通じてそれを補強する。歩みはゆっくりながら、週刊連載(それもジャンプという舞台で!)における重要な手法を丁寧に組み込み、魅力的な世界を作り上げていくその手腕は、やはり本物。あととにかく絵が見やすくて上手い!

特別なことは何も無い、平凡な高校生の競技ダンスなのに、なぜここまで心が熱くなるのか。これこそ少年漫画だ!

『背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~』|集英社『週刊少年ジャンプ』公式サイト

第8位

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▽ 海法紀光/千葉サドル『がっこうぐらし!』(5) (6)

この作品を今年になるまで知らなかったことを、心から恥じます。多くの方同様、アニメ第1話を見て、即、全巻購入しました。ぶっ飛びました。信じられない。こんな漫画が存在したなんて!

すでに多くの方がご存じの通り、本作はいわゆる「日常系」の皮を被ったゾンビもの……というか、「ゾンビものの世界の日常系」漫画です。世界の変容を受け入れられない主人公・由紀から見た「日常」をゾンビたちの世界の中で描く本作は、しかし5巻にて大きな転換点を迎えます。これまでの彼女たちの根城であった「がっこう」はダメージを受け、旅立つ必要性に迫られます。由紀はその中で、自覚します。一方で今度は、みんなの頼れる部長であった悠里が、寄る辺であった「がっこう」を失ったが故に壊れ始める……。物語の中で語られていませんが、もう明白でしょう。彼女が連れ歩く「妹=るーちゃん」が、ただのクマのぬいぐるみであることは!

完全に壊れ始めた悠里だけでなく、胡桃もゾンビ化の後遺症が残っている描写が度々はさまれており、とにかく不穏な予感しかしない構成に打ちのめされっぱなしです。かくして物語は大学編へ。ありとあらゆることがやり尽くされたと思われていたゾンビものに、こんな新鋭が登場するだなんて、想像もしていませんでした。来年も悠里の曇る顔を楽しみにしましょう!

TVアニメ「がっこうぐらし!」公式サイト

第7位

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▽ ゆでたまご『キン肉マン』(50) (51) (52)

毎週日曜、深夜0時。みんなでサイトを更新する。読む。叫ぶ。ネット上にその想いをぶちまける。そう、これはかつて、学校で「今週のジャンプ」について語り合った思い出、そのまま。ですが、ここにあるのはただの回顧ではない。かつての人気作品の復活を惰性で楽しんでいるわけではない。もう大きな声で言う必要なんて無いかもしれません。でも、それでも言いたいのです。「ゆでたまごは、今が全盛期である」と!!!

今年も圧倒的に素晴らしかったキン肉マン。あの裁きの神ジャスティスが、完璧超人始祖の最後の1人「ジャスティスマン」として登場し、アシュラマンと激突、粉砕。そしてついに物語は、正義超人、悪魔超人、完璧超人の3陣営が国立競技場に集いました。そして、ああそして、もう、断言していいでしょう。キン肉マン史上のベストバウト、バッファローマンvsガンマン!

思えばガンマンは初登場時から我々を盛り上げてくれました。なんかしゃくれた一つ目のやつが出てきたと思ったら次の回ではデザインが一新されており「さすがゆで!」となった上に、その本人が「私は変身などしなーい!」「私はなぁ、ウソが大嫌いなのだーーっ」と叫ぶという(メタ的な意味で)特大ブーメランをかまし、しかし実力の方はまっとうに強いというとんでもないキャラクターでした。この濃すぎる男を、バッファローマンは倒せるのか? ああ、その結末が、あんな形で描かれるなんて! 漢・ガンマン。今年、最も心震わされた、漢の中の漢よ……。

もう一度言います。ゆでたまごは、今が全盛期です。

週刊プレイボーイ web comic - 無料マガジン・無料漫画セット - Yahoo!ブックストア

第6位

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▽ 田亀源五郎『弟の夫』(1)

田亀源五郎先生が、一般紙で何を描くのかと思ったら、いきなりこんなとんでもない名作を描き始めてしまった! すごすぎる!

父・弥一と娘・夏菜の二人暮らしの家に、カナダからやって来たマイク。彼は、弥一の双子の弟の、結婚相手だった。弟が死んだことで、彼の故郷である日本へとやってきたマイクは、弥一、夏菜と共に暮らし始める。弥一は戸惑うが、幼い夏菜は素直に受け入れる。「男同士で結婚!? そんなことできるの!?」「日本じゃできないけどよその国ならできることもあるんだよ!」「……変なの。こっちでよくてあっちでダメなんて、そんなの変!」

弥一と夏菜、その認識の違いはどこから来るのか。夏菜の素朴な疑問に、マイクは答えていく。「どっちが旦那さんでどっちが奥さんだったの?」「奥さんいません。どっちもハズバンド」……そう、人は自然と、どちらかが男役で、どちらかが女役だと思い込む。でも実際はそんなことはない。何も判っていなかった。この作品は、まだまだ何も理解されていない、ごく自然と結婚した男同士のことを、知っていく物語なのです。

マイクは時に、喪った夫を想って泣きます。その姿は異性愛者となんら変わること無く、自然のままにそこにあります。家族とは、結婚とは。死んだと思わせる描写ばかりだった弥一の妻が1巻のラストで登場して、ますますどう転がっていくのか楽しみになってきた本作。来年も期待しています。

作品紹介(弟の夫/田亀源五郎) | 月刊アクション

第5位

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▽ 安田弘之『ちひろさん』(3) (4)

元風俗嬢のお弁当屋さん、ちひろさんの物語。もはや何も言うことはなし。今年も極上でした。

まるで幽霊のように、幸せと不幸の中で遊び続けるちひろさん。何もかもから自由な彼女の、「人もモノも何一つ捨てられなかった会社員時代」「私の心は何度も死んだ」という過去が垣間見える中で、それでもいずれ、そのように自由に生きられるときが来るのだとするならば、それは希望以外の何ものでもありません。

なぜ人は不自由に生きるのか。もっと自由に生きれば良い、やりたいようにやればいい、「お酒に酔えなくても、恋に酔えなくても、シラフで楽しいことしてりゃいいじゃん?」という彼女の言葉に、今日も救われます。

ちひろさん 第3巻 | 秋田書店

第4位

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▽ ながいけん『第三世界の長井』(3)

ちゃんと続いた! 3巻だ! ということで出ただけで感謝の言葉しかない、ながい閣下の最新刊!

相変わらず完全に意味不明な世界で意味不明なキャラクターたちが意味不明に言葉を羅列していく人外魔境、今回は完全に不審者でしかないマッハエースにひたすらどん引きし続けることになりますが、驚くべきことに終盤で、なんと『神聖モテモテ王国』のキャプテン・トーマスが(通行人として)登場! やはり世界観が繋がっているのか……とマジメに考えるのも馬鹿らしくはありますが、どうやってこれを描きながら正気を保っているんだろう作者は……とかなり心配になります。

ありとあらゆる(もしかすると作者の現実世界での周囲の人間による?)デタラメな設定たちが「アンカー」として埋め込まれ実現化していく世界で、ありとあらゆる因果律がねじ曲がり、破綻していく、そのギリギリの線でギャグが成立していて笑うのだけれど、ハッと我にかえって恐ろしくなる……そんな世界のデタラメさをそのままに叩き付けてくる怪作です。神の手にすら負えなくなった狂った世界は、果たしてどこに着地するのか。っていうか着地させる気はあるのか。正気を保ったまま着地させられるのか。それまで連載が続くのか。途中で狂ってやめてしまうのではないか……。いろいろ心配です。4巻も正座して待ちます。よろしくお願いします。

小学館コミック -ゲッサンWEB-:作品紹介 第三世界の長井

第3位

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088802934/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/408880421X/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088804562/minesweeper96-22/ http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4088804937/minesweeper96-22/

▽ イーピャオ/小山ゆうじろう『とんかつDJアゲ太郎』(1) (2) (3) (4)

2015年は、この恐るべきとんかつDJのデビューの年だったと記録されるでしょう。

ジャンプ+で連載中の、素晴らしいとんかつDJ漫画です。多くの人が、絵柄を一目見て思うでしょう。質の低いギャグ漫画だと。とんでもない。これは極めて精密に描かれた現代のクラブカルチャー絵巻なのです。

渋谷のとんかつ屋の息子である勝又揚太郎は、ある日ひょんなことから渋谷のクラブに入り込み、その魅力を知る。やがて彼は伝説のDJであるDJビッグマスターフライ(モデルはおそらく、スクラッチを世に知らしめたグランドマスター・フラッシュ)のプレイを目の当たりにし、そのビートのBPMがキャベツの千切りと同じであること、次の曲を聴くDJと油の音を聞くとんかつ職人がおなじであること……すなわち、とんかつ屋とDJが同じであることに気付く。そうして彼は、とんかつ屋とDJの両方の道を、すなわち「とんかつDJ」の道を歩んでいくことになる。

ギャグだと思うでしょうか。たしかに、この作品では「とんかつ屋とDJが同じ」というギャグが、ありとあらゆる場面で登場します。しかし、これは極めて重要なことです。DJやクラブカルチャーは、もともと大きく誤解されている文化です。クラブに遊びにいったことがない人にとって、クラブは恐い場所であり、DJはよくわからないことをしている人という認識でしかないはずです。そうした馴染みの無いものを世に伝えるとき、困難なことが3点あります。「正確に、ありのままに描けるか」「興味の無い人にも届くように工夫されているか」「その工夫が本質とかけ離れて、別物になってしまっていないか」の3点です。

本作は、この3点を高いレベルでクリアしています。「DJやクラブカルチャーについて、とても丁寧、かつ面白く、しかし脚色なく、ただひたすら自然と普通にありのままの形で描いている」上に、「それを面白いギャグマンガとして、そこに興味のない人に自然と届けることに成功しつつある」にも関わらず,同時に「とんかつをアゲるのと客をアゲるのは同じ、とんかつ屋で客をもてなすのとDJが客を躍らせるのも同じ、というネタが頻出してギャグになっているが、それは実は真理である」。

本作で描かれる描写の多くは、DJやクラブカルチャーの実態に即した、極めてリアルなものが多く、読んでいて唸らされるほどです。同時に、客をもてなし楽しませる点において、とんかつ屋のような料理を振る舞う人と、DJがとてもよく似ている、というのは腑に落ちる話です。つまりこれは、とても丁寧な作品であり、なおかつ、最高に面白い漫画である、ということです。

アニメ化も決定しました。DJやクラブカルチャーが正しい姿で多くの人に伝わっていくのが楽しみでなりません。来年もアゲてもらいましょう!

とんかつDJアゲ太郎 - 少年ジャンプ+

第2位

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▽ 阿部共実『死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々』(2)

出世作『空が灰色だから』を唐突に終わらせ、昨年『ちーちゃんはちょっと足りない』で大絶賛を浴びた天才・阿部共実は、今年、さらに一歩、先へと進みました。

本作に収録された「8304」と「7759」は、現代の漫画表現の極北と言って差し支えないでしょう。足りない世界、なぜ君は自分と同じではないのか、美しいものを美しいと感じられる人間は、なぜ死んで終わっていくのか。満たされない思いが絵と言葉であふれ出します。足りなくて、絶望だらけのこの世界を、どうしてこの人は、こんなにも美しく描けるのか。信じられません。

ここ数年、阿部共実作品を読み続けていますが、年を経るごとにどんどん進化していく様に驚きを隠せません。来年はどこまでいくのか、次にどんな作品を描いてくれるのか、そして「おもいでをまっくろに燃やして」の続きが描かれることはあるのか?

お気付きのことと思いますが、僕はこの人の作品に対して、明らかに冷静な評価ができていません。そんな作品に出会えるということを、幸福に思います。

minesweeper96.hatenablog.com

死にたくなるしょうもない日々が死にたくなるくらいしょうもなくて死ぬほど死にたくない日々 | Champion タップ!

第1位

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▽ 高浜寛『蝶のみちゆき』

1月に本作が刊行されたときから、今年のベストはもう動かないだろうと思っていました。そして、動きませんでした。

長崎丸山の太夫、几帳の生涯を描いた作品。作者は『四谷区花園町』の高浜寛。遊女たちの遊郭の世界とその人間模様を、息が止まるような美しい描写で淡々と描くその技法は、驚異的なレベルと言えます。美しく、艶やかで、悲しいけれど、暖かい、人生そのものと言える世界が描き出されており、ページをめくるたびにため息止まりません。几帳という人物の魅力と、その周囲の人々の思い。確かにそのような人生があったのであろう、と読み手に確信させるだけのリアリティが、空気とともに襲いかかってくるかのようです。

オランダ人医師に告げる「病気の兄」という“虚言”の行方がどこに辿り着くのか。ぜひ、電子書籍ではなく物理書籍で一気に読んでいただいたあと、最後にカバーを外していただければ幸いです。彼女たちはたしかに、そこにいたのです。人生は短い。

トーチweb 高浜寛特集