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From The Inside

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植芝理一『謎の彼女X』9巻OVAに『ディスコミュニケーション』の戸川と松笛が登場して感涙。さらにディスコミが10月に新装版!

書影だと分からないけど、実はサイドに戸川と松笛が描かれてるんだよ。植芝さん12年ぶりに描いたらしい。

DVD付き 謎の彼女X(9)限定版 (アフタヌーンKC)

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2012年の最高傑作アニメーションに(僕の中で)内定している『謎の彼女X』、原作マンガの9巻が発売されました。本編の方は文化祭の映画制作編で、ラストの崩壊した街の見開きとかほんと良いよね……という感じで満足なのですが、さらに限定版はOVA付きという豪華さ。ありがてえ……ありがてえ……。

このOVAは「謎の夏祭り」という副題が付いていて、原作4巻の夏祭りのエピソードも交えてはいるのですが、なんと作者である植芝理一のデビュー作『ディスコミュニケーション』の主人公2人、戸川と松笛が登場していて、僕はもう涙で前が見えません。ありがてえ……ありがてえ……。

「謎の彼女X」9巻限定版のOADに「ディスコミ」戸川ら登場 - コミックナタリー

ディスコミュニケーションについて解説します。

摩訶不思議恋愛漫画『ディスコミュニケーション』

『ディスコミュニケーション』は、植芝理一のデビュー作です。

ディスコミュニケーション(1) (アフタヌーンKC)

ディスコミュニケーション(1) (アフタヌーンKC)

月刊アフタヌーンにて1992年から2000年にかけて連載された摩訶不思議恋愛漫画です。超名作です。最も好きな漫画を10作品挙げよと言われたら余裕で入るレベルの名作です。

「相互不理解」というタイトルを持つ本作は、普通の少女「戸川安里香」と、不思議な少年「松笛篁臣」が、ある謎の答えを追い求めるという物語です。戸川は松笛に恋をし、2人は付き合い始めます。松笛は変な男の子なので、戸川に「涙を飲ませて」「襟足を剃らせて」などの不思議な要求をします。そんな変な男の子である松笛のことを、戸川はどうして好きになったのだろうかと自問します。「どうして私は松笛くんのことを好きになったんだろう?」

コミックス合計17巻にも及ぶ物語は、ときに2人の不思議なコミュニケーションを描き、ときに冥界という名の深層心理の谷へと落ちていきながらパラレルワールドを巡り、ときに学園の不思議な生徒たちとのドタバタ劇を繰り広げ、ときに世界の醜さと美しさの中を旅します。その度に、戸川は自問します。そうしてやがて、物語は「どうして人は人を好きになるのか」という疑問へと至ります。

過剰とも言える背景の書き込みと、異常なまでに取り入れられた民俗学/神道/心理学/オカルトのギミックと、矢鱈滅多に詰め込まれた文学/特撮/アニメ/音楽などからの影響をごった煮にしながら展開するストーリーはまさに狂気の世界。戸川と松笛という、極めて魅力的なキャラクターがその中心にいることで、かろうじて物語は物語として有り続けます。

とても人を選ぶ漫画だと思います。でも名作です。戸川が良い女すぎて生きるのが辛い。

人を好きになる、という謎

で、今回、謎の彼女Xの卜部と椿が、夏祭りで戸川と松笛に出会うお話となるわけです。なんというか、完璧でした。全体としてはナゾカノなんだけど、ちゃんとディスコミュニケーションの話の1つとしても成立しそうな内容で最高です。というか動く戸川と松笛が見られただけで僕はもうノックアウトされています。信者って怖いですね。

ディスコミはファンタジー色が強いのですが、「謎の多い異性を好きになってしまう主人公」「人を好きになる、ということの不可思議さがテーマ」「体液の交換による世界との接続と絆の結びつき」「好きな人のよだれは甘い」などの点がナゾカノに継承されています。

ナゾカノも元々はもうちょっとファンタジー色の強いお話としてプロットが作られたそうですが、最終的に「思春期の男の子にとって好きな女の子は存在そのものがもう謎なんだよ」みたいな純粋培養の結果、こうなったということみたいです。良い。

戸川は物語を通じて、そしてその先も、どうして松笛を好きになったのか、その謎を追い続けます。それは、椿がどうして卜部を好きになったのか、ということを延々とフェティシズムあふれるストーリーで描写し続けるナゾカノへと受け継がれているのです。アニメーション映像という形で、2つの物語が邂逅してくれたので、僕は満足です。信者って怖いですね。

ディスコミ、カムバック!

ナゾカノのアニメスタッフでディスコミをアニメ化してくれないかなあ……と思っていたところ、こんな話が入ってきました。

http://kc.kodansha.co.jp/content/top.php/1000006029

うおおおおディスコミの新装版! カバー描き下ろし!

ディスコミは長らく単行本が絶版となっていて、新しい読者に勧めるには中古を探してもらうか、電子書籍版を案内するしかありませんでした。今回、おそらくはナゾカノのアニメ版のヒットをきっかけに新装版の企画が立ち上がったのでしょう。楽しみですね! 講談社サイトでは「冥界編」と描かれていますが、9巻に入っていたチラシでは「第1巻 冥界編 I」となっていたので、精霊編までやってくれるんじゃないでしょうか。「単行本未収録回も完全収録」ですってよ! 内宇宙編の未収録3話分のことですよね! うおおおおお! アニメ化もお待ちしております。ついでに『夢使い』もまたなんかやってくれませんか!

じゃディスコミを再読する系の仕事が今からあるからこれで。