『シン・ゴジラ』、現実対虚構、そして泉修一保守第一党政調副会長の良さについて

シン・ゴジラを見てきました。公開2日目である7月30日の昼、京都にいたので京都で見て、新幹線N700系に乗って東京に戻ってきて、その日の夜に品川で2回目を見ました。3回目をいつ見にいこうか考えています。初回が通常、2回目がIMAXだったので、次はMX4Dが良いかなあ。

つまり、それくらい素晴らしかったということです。

shin-godzilla.jp

まずはとにかく見てほしいし、見ずにあらすじだけを眺めてなるほどっていうのこの映画にあってはあまりにももったいないので、この文章では特にあらすじとかは書きません。ネタバレはしまくるけど。なので見てない人はいいから早く見てきてください。早く全人類が見てほしい。

現実対虚構

見ましたか? ではネタバレしまくります。

すでに素晴らしい批評がいくつかアップされています。

amberfeb.hatenablog.com

hamatsu.hatenablog.com

huyukiitoichi.hatenadiary.jp

これらを始めとしてネット上ではすでに語られ始めている通り、この映画はまさしく「現実対虚構」というキャッチコピーそのものを描いています。政府側のたくさんの会議と手続きという滑稽にも見える「現実」が、ゴジラという悪夢のような「虚構」に塗りつぶされていく序盤の対比は見事であり、それでも自分たちにできることを、自分たちの選んだ手続きを通じて対処していく姿が、だんだんと格好良く見えていくのでした。でも中盤で「虚構」の熱線によって文字通り薙ぎ払われます(本当に薙ぎ払われて唖然としたよ!)。

最終的に日本は多国籍軍による核兵器によるゴジラ駆逐計画という圧倒的な「現実」を突きつけられます。しかし、主人公的立ち位置にある長谷川博己演じる矢口蘭堂内閣官房副長官率いる巨大不明生物特設災害対策本部、略して「巨災対」の面々はゴジラ凍結プランを完成させ、まるで「虚構」にしか見えないヤシオリ作戦を、しかし極めて「現実」的な手続きと分析と生産と計画によって実行に移します。そして、凍結したゴジラを背景に、ゴジラと共存していくしかない、という結論。現実と虚構が入り混じり、虚構を現実として生きていくしかない私たち。しかしそれは絶望ではない、だって、人間を信じて、好きなようにやったら、こんな結末を迎えられたのだから……。あまりにも胸を打つ脚本です。

現実は滑稽で鈍重で時に過ちを犯すかもしれないけれど、それでも現実を突き詰めるしかないし、虚構の手続きを現実として受け入れて愚直に進めれば、その力は虚構を内包し得る。ヒーローではなく、社会を作り出し営み続けていく人間たちに対する、庵野秀明の圧倒的なまでの人間賛歌。素晴らしかった!

雑感

というテーマ的なお話でとても良い映画なのですが、それはそれとして、見ている間はもうユーモアがあちこちに含まれていてぷーくすくすってなるし、すぐウワーッウワーッてなるし、視聴体験として極上です。ということで雑感を箇条書きで書きます。ゴジラに詳しいわけではないのでそちら方面のにやにやポイントが抜け落ちてます。

  • 最初のボートのシーンでもう「あっこれ最高のやつだ」って分かる
  • 序盤は政府の滑稽な会議でぷーくすくすみたいな部分が多くて、その最高潮が生物学者3人のシーン
  • 川を遡上していく巨大不明生物に対して登場する市川実日子演じる尾頭ヒロミ環境省自然環境局野生生物課長補佐ヤッター最高! 早口良いよね……
  • 上陸。ついにゴジラきたぞ! やったーかっこい……えっなにそれは(ドン引き)。みたいな上陸第二形態の衝撃。よくあれ公開まで隠してくれた。道路の向こうからあのキモい第二形態の顔が迫ってくるシーンはちょっと筆舌に尽くしがたい。大きさが後のゴジラほどでかくないから地味にリアルで想像しやすい大きさになってしまい現実感があって怖すぎる。あと目が死んだ魚なので絶対にコミュニケーションとれないわこれ感バリバリで生理的に完全に無理だしとにかく怖い。動きが変とか言われてるけどそれがもう逆に怖い。ここが最初の大盛り上がりポイントだと思います
  • そして進化。進化やばい。進化してるときの肌の感じがとにかくやばい
  • 基本的に頼りない大杉漣演じる大河内清次内閣総理大臣だけど、それでもなんか憎めないし頑張ってるぞこの人感が出てくるのがこの辺りからで、まだ人が残っているという情報を聞いて自衛隊の弾を国民に向けるわけにはいかん!と攻撃中断命令を出すあたり結構グッとくる。もちろんイケイケな余貴美子演じる花森麗子防衛大臣も良い
  • いったんゴジラが帰って朝になって普通に登校してるシーンがものすごくリアル
  • 「巨災対」っていう名前が強い。尾頭ヒロミ環境省自然環境局野生生物課長補佐を始めとした巨災対メンバーは言わずもがな最高なんだけど、もう最高で、津田寛治演じる森厚労省医政局研究開発振興課長と塚本晋也演じる間国立城北大学大学院生物圏科学研究科准教授と高橋一生演じる安田文科省研究振興局基礎研究振興課長の3人が大好きすぎて困る。そしてこの変わり者メンツを集められる松尾諭演じる泉修一保守第一党政調副会長があまりにも強すぎるし最高の政治屋でありこのあと最終的に俺は泉ちゃんがこの映画で一番好きになります。あとエヴァのあのBGM大好きなので流れるたびに良さにまみれた
  • 石原さとみの異物感は割と良い方に転がった気がします。カヨコ・アン・パタースン。最初はいけ好かない異物だけど、おばあちゃんの話が出てきたあたりからオッてなって良い。あと後ろにいるマフィア梶田がずるい
  • シャツが臭いシーンすき
  • タパ作戦。瀧!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 爆風で前線基地が揺れるときも微動だにしないピエール瀧演じる西郷タパ戦闘団長の良さたるや
  • そして熱線。あっ背中が光った! あっ口が開いた! くるぞーくるぞーきた……えっ(ホップ)、ええっ?(ステップ)、はあ!?!?!?!?!??????!??(ジャンプ)、の三段コンボ(見た人には絶対に伝わると思う)。総理……。二個目の盛り上がりポイント
  • 感情的になる矢口に「まずは君がおちつけ」と水を渡す泉ちゃんが良すぎる……そして水を飲んで「……すまない」って言う矢口良い……
  • 分析の結果が出るたびにゴジラやばい感がぐいぐい上がっていくあたりの間国立城北大学大学院生物圏科学研究科准教授がとにかく良い
  • 牧教授の「私は好きにした、君らも好きにしろ」という言葉が、いろんな人に伝播していって「好きにしていく」流れが良い。その極点として、泉ちゃんが自国でなんとかすべきだと平泉成演じる里見祐介内閣総理大臣臨時代理を説得、これまで矢口に対して現実を見ろと言い続けてきた竹野内豊演じる赤坂秀樹内閣官房長官代理が里見に「そろそろ好きになさったらどうですか」と提言し、里見が(この状況にあってはむしろ頼もしくすら見える)おっとりとした様子で了解し「どこに判を押したら良いの?」と聞く、という最高の名シーンにつながる。ここめちゃくちゃ好き。覇道ではなく王道を。このあたりはもう、登場人物が全員、最高の動きしかしていない
  • ヤシオリ作戦、ヤシオリはヤマタノオロチに飲ませた八塩折之酒からきてるんだけど、もちろんヤシマ作戦によく似たフレーズで見てる方はもうにやにやが止まらないのである
  • ヤシオリ作戦はもうずっと「最高かよ……」ってなり続ける最高さ加減で、とにかく無人新幹線が突撃したところからえええーーーー!!?!???ってなって、無人戦闘機でとにかくエネルギーを使い果たさせて、ビルを爆破してとにかくゴジラを転ばせて、きわめつけは無人在来線爆弾。ここまでずっと出っ放しの明朝体フォントで無人在来線爆弾。とにかく声に出して読みたい日本語である無人在来線爆弾。流行語大賞にしてほしい。強すぎる。電車がゴジラに一矢を報いた瞬間である。宇宙大戦争のBGMがテンション上がる。俺も無人在来線爆弾って叫びてえー。そして最後はポンプ車で口から血液凝固剤を注入。地味! 地味すぎて最高。海外の皆さんの力も借りつつ、電車と高層ビルとはたらくくるまで戦う。日本すぎる!
  • その裏で最高の仕事をする里見さん……里見さん良すぎる……
  • これで除染のめどが立ちそう、良かった……と最後の最後で微笑む尾頭ヒロミ環境省自然環境局野生生物課長補佐にやられる俺たちはちょろすぎるのでは?
  • 凍結したゴジラをバックに共存していくんだエンドと、最後の尻尾の部分に生えかかってる人型のなにものか達が良すぎて良すぎる……ってなってたらエンドロールがずるくて、結構みなさんはゴジラvsメカゴジラのテーマをあげてるけど僕は怪獣大戦争のテーマがもうね……という感じだったしエンドロールの協力者的な人や企業や団体や政府関係各所が多すぎて笑うしちょくちょく出てくる庵野秀明でまた笑う

第二形態、熱線、電車、の三大盛り上がりポイントはもちろんだし、全般的に良くて、もちろん良くない部分とかもあるけどまあどうでもいいくらいに良くて、とにかく泉ちゃんが良かった。遠回しな生きて帰ってこい発言とかもうね……かっこ良すぎるよね……幹事長なら任せろ……。

とにかく情報量が多すぎてたぶん抜け落ちてる良さみポイントがありまくる。三回目も見なきゃいけないしサントラも買わないといけないぞ! サントラ在庫なさそうだぞ! どうすればいいんだ!

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