シギサワカヤ『ヴァーチャル・レッド』3巻。完結。生と死と後悔

読み終えて、1時間くらい、ずっと泣き続けました。

とても分かりづらい作品です。その女は誰で、自分は誰で、今はいつで、何が起きているのか、何をしゃべっているのか、気を抜くとすべて、仮想の赤いヴェールの向こう側に霞んで消えそうです。

本当のことは分からない。情報は伝聞で、すべて終わった後にもたらされる。残るのは改竄された記憶だけ。確たるものは何もない。…………そうやってまでしてひとり生きることに、なんの意味が?

「さっきからずっとおかしな夢を見ている気がする」という主人公の言葉が、痛いほどよく分かります。それでも、やがていつか死んでしまうその前に、緩く血を流しながら、曖昧な情報と記憶の中で笑うことができるだろうか…………。

「感動する死」なんて、現実に、少なくとも私の目の前には無かったし、これからもたぶん無い。

『ヴァーチャル・レッド』3巻(2013年9月30日発売 ※書籍扱い) - シギサワカヤBlog

僕の目の前にもありませんでした。だからきっとこうやって、曖昧な情報と記憶の中に居続ける。この作品は、それを肯定してくれます。ただそれだけで、とても嬉しかったのです。

…………ところでAmazonの書影、はやく正しいものにならないかな。(2013年10月4日追記:書影、出たので差し替えました。赤すぎるけど)

装丁、最高でした。赤い幻想。