見ればそうなる。いがらしみきお『I【アイ】』完結

言葉が出ない。

世界は最初からそこにあって、人間は言葉を作った。言葉で見るようになった。でも、言葉がなければ、ただ見ればそうなるのだ。そこに神様はいる。

1巻は2011年のトップでした。2巻は2012年のトップでした。そして3巻。とても分厚くて、濃い緑色の表紙が映えます。神様が、そこにいるようです。

自らの眼をつぶし、神様を求め続ける雅彦。やがて耳すら聴こえなくなり、それでも妻とともに、焼き物を作りながら、神様を探す。そうして、母の死を看取った直後に、大きな地震が襲う。その果てに、たしかに最後に、神様が描かれました。

真っ暗な青空。

ひとつひとつの、絵が、表情が、世界が、神様の姿になって、1冊の本の中に封じ込められているように感じました。こんなものを、僕は読んだことがありません。雅彦は、イサオは、あるいは、いがらしみきおは、言葉で解釈される前の“世界”そのものを神様であると言います。僕らは神様の中にいる。その真意を、感じ取りましょう。ここにはすべてが描かれています。

あまりに濃密な1冊です。読み終えてからずっと、目眩が止まりません。ただひたすら、いがらしみきおの異形の才能に打ちのめされています。

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