91台のドラム、91歳の法話、3Dプロジェクション・マッピング、アナーキズム、テクノ、ノイズ、そして惑星。『FREEDOMMUNE 0<ZERO> ONE THOUSAND 2013』レポート

f:id:minesweeper96:20130714215823j:plain

http://www.dommune.com/freedommunezero2013/

今年も行ってまいりました。

自宅でゆるゆるな開会宣言 with ele-kingTVを視聴してから出発。

BOREDOMS presents 7×13 BOA DRUM

19時前に会場入り。気持ち大きめの紙幣を募金箱に投入し、手塚治虫先生の仕事机を拝見しつつ、そのままBOA DRUMフロアへ直行。

中央のBOREDOMS EY∃ちゃんの声と動きに合わせて、7×13=91台のドラムが、空間を切り裂く。91台のシンバルが鳴ったら、91台のバスドラムが叩かれたら、どんな音がするのか。体験した者にしか分かり得ない、圧倒的な儀礼空間でした。きっと映像じゃあ伝わらなかったと思います。

Rhizomatiks / Sinjin Hawke / Z-MACHINES / TOWA TEI

今年のMVPは、実はRhizomatiksだったのではないだろうか……と半分本気で思ってしまうほど、メインフロアの3Dプロジェクション・マッピングは圧巻でした。レクサスから立体的なステージに向かって投影される映像の数々、反則すぎる。

そんな反則的なインスタレーションを背にして、開催直前に出演がアナウンスされたベースミュージックのSinjin Hawkeでひと踊り。きれいでファニーな感じが昨今のベースミュージックの中でも人なつっこい印象。途中、ライブステージのロボットバンドZ-MACHINESをチラ見して、またメインフロアに戻ってテイトウワ。ここ数年スルーしていたテイさんだけど、先日リリースされたニューアルバム『LUCKY』が予想外に良かったこともあり、ポジティブに踊る。アルバム1曲目の「Radio」もかかってニッコリ。

瀬戸内寂聴

そして、本日のヘッドライナーおひとりめ、瀬戸内寂聴天台寺名誉住職! トークブースではなくライブステージである。流石。91台のドラムから、91歳の法話へ!

パンクであった。その素晴らしき法話は恐らくこの日もっとも多くの観客を集め、多いに笑わせ、そして勇気づけた。恋愛の話(恋と革命!)、神様の話(「見たことある人いる? ある人は病院行った方がいいわね」)、情熱の話(「情熱を忘れてはいけない、好きに生きなさい」)、そのほかいろいろあったけれど、僕ごときが言葉にしたところでその言霊を伝えることは到底できないでしょう。ただ一点、心に染み渡った言葉を残しておきます(細部うろおぼえ)。

私は親の死に目にも愛する人の死に目にも会っていない。でもね、愛する人が亡くなっても、死に目に会えなくても、ちゃんとその人の魂はあなたの元に来ているのよ。そう考えなさい。目に見えないものが大切なのよ。

泣いた。

その後、終了時間を間違えて質疑応答タイムが始まって笑った。

Milton Bradley / 大友良英&あまちゃんスペシャルビッグバンド

素晴らしき法話に呆然としながら軽くご飯を食べ、Milton Bradleyへ。すごいハード。普段ならこれはもう踊り狂う……ところなのだけれども断腸の思いでフロアを後にしてライブステージへ。大友先生! 尼さんからあまちゃんへ!

実はお恥ずかしながら僕は「あまちゃん」を視聴していないのだけれど、大友先生なんだし見ないわけにはいかないとばかりに乗り込みました。いや本当にカッコ良すぎてびっくりしました。オープニングテーマなんてもろにスカだし、作曲家人生の到達点だという「じぇじぇじぇ」や、“ちょっと微妙なジミヘン”というご本人の言葉そのものな「地味で変で微妙」など、とにかくすべて素晴らしくて踊りまくりました。あと「灯台」良かったなー。最後は大友先生もちょっと暴れて「ああ……俺たちの知っている大友先生だ……!」となりました。

DJ Nobu / Penny Rimbaud co-founder of CRASS

絶対に外さない男ことDJ Nobuちゃんでガン踊り。最高。

……が、ここでまたしても断腸の思いでフロアを後にしてライブステージへ。ふたりめのヘッドライナー、アナーコ・パンクの生き字引、Penny Rimbaud師匠!

圧巻。

まさかの朗読! ゆっくりと動く少女の顔のアップを投影したスクリーンの下、フリーフォームなサウンドに乗せて、Penny RimbaudとEve Libertineがポエトリーリーディングである! 途中、やっぱりやってくれたフリーミュージック版「Nagasaki Nightmare」でノックアウト。ある意味、この日もっとも(真の意味で)パンクでした。

初音階段 / 灰野敬二 / EP-4 unit3+伊東篤宏 / Open Reel Ensemble

トークブースへ。すでに非常階段のトークは終わり、初音階段のライブが始まっておりました。初音ミクみたいな人いる……。人間が歌っているように見えるけど、声は初音ミクを使っているようにも聴こえました。

どうやら緑魔子「やさしいにっぽん人」は終わってしまっていたようでしたが、僕がたどり着いた後も、荒井由実「卒業写真」、オフコース「YES-YES-YES」、ボビー「炎のたからもの」(カリオストロ!)、高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」、The Velvet Undergroud「Sunday Morning」、そしてJAGATARA「タンゴ」に、裸のラリーズ「白い目覚め」! とまあやりたい放題。もちろん後ろでJOJO広重はギターノイズ掻き鳴らしまくり。すごすぎる。

そのままライブステージの灰野敬二さんへ(Claudio PRCは断腸の思いで以下略)。今年は不失者ではなくソロ。機材と、自分自身の「声」でノイズを作り出し、轟音をレーザーとともにフロアに叩き付けていく、鬼気迫るステージでした。

そして、メインフロア、実は今回ひそかにめちゃくちゃ楽しみにしていたEP-4 unit3+伊東篤宏!

EP-4の佐藤薫と、PARAの家口成樹、そして蛍光灯の放電ノイズを放出する楽器「OPTRON」を作り出した伊東篤宏の3人が生み出すエレクトロニクス・ノイズ! もう、3Dプロジェクション・マッピングの映像とOPTRONの光がマッチしすぎていて大変なことに。

こんなパフォーマンスがあり得るのか……と唖然。電子音とノイズを発生させ続ける3人の淡々とした立ち姿にもシビれました。

終了と同時にOpen Reel Ensembleへ。かっこいいと聞いてはいましたが、本当にかっこよかった! 何台もの旧式のオープンリールを操る姿は、ただのインスタレーションの域を超えて、純粋なステージ・エンターテインメントとして素晴らしいものでした。終盤、風船をテープにつなげて客席に投げ入れてリールを回すという荒技も。

冨田勲 feat. STEVE HILLAGE
「"PLANET ZERO" ensemble with Dawn Chorus」

そして大トリ、3人目のヘッドライナー。

2011年、幻と消えた第1回FREEDOMMUNEで披露されるはずだった、冨田勲先生による暁の合唱=太陽の黒点が引き起こすドーンコーラスを使用した、「惑星」のライブ! 2年越しリベンジ!

宇宙の映像を背景に、スーツ姿の冨田先生が、そして本間千也のトランペットと、元GONG/SYSTEM 7のスティーブ・ヒレッジのギターが、暁の合唱とともに「惑星」を再現していくその姿は、91台のドラムと法話とあまちゃんとアナーキズムとテクノとノイズが渾然一体となった空間の夜明けに相応しいものでした。冨田先生が常々おっしゃられていたサラウンドのすごさを体感しました。自然現象の生んだ電子音が、宇宙から降り注いで、いま僕らを包んでいる……! いままで「惑星」をステレオで聴いててすみませんでした……! 頑張って自宅にも5.1chサラウンド環境を構築します……!(お金があれば……!)

木星

木星

  • 冨田勲
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

感無量!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

…………そうして疲れ果てた体を引きずって帰宅して、寝て、起きて、今この文章を書いています。昨年が「目眩」であるとしたら、今年は「覚醒」であったと言えるでしょう。ありがとうございました。