三部けい『僕だけがいない街』2巻、雪に閉ざされた極上サスペンス

1巻の段階で面白いなあと思っていたけれど、これほどとは。

タイトルと、「悪い事が起こる直前、時間が何度も巻き戻って繰り返す」という設定、そして装丁に惹かれて買った1巻が予想以上に上質のSFサスペンスだった本作『僕だけがいない街』。母が殺害されたことをきっかけに、主人公の深層心理に刻まれ続けてきた「小学生のころの連続誘拐殺人事件」が起こる前まで時間が巻き戻ってしまった結果、2巻では小学生として生活しながら事件を回避しようと奮闘する、という物語に変貌しました。

1冊を通して、緊張感が尋常じゃありません。殺害される運命にある無表情な少女・雛月加代が可愛すぎる不具合はあるのだけれど、親から虐待を受ける彼女をサポートし、事件に至る未来を変えようとする主人公(見た目は子供、頭脳は大人)の姿はとても格好いい。「僕なら助けられたハズなのに」という後悔と、母の死という運命を覆すという意志が、彼を突き動かします。だからこそ、この2巻はキツい。

雪に閉ざされた街で、じわじわと悪意が取り囲んでいく様に、息苦しさを覚えます。明るいエピソードひとつひとつを積み重ねて、運命に抗う日々を丁寧に描いてくれるたび、息苦しさは増します。この空気感をきっちりと形にできるのは本当にすごい。

まだまだ、謎と伏線はてんこ盛り。続きが楽しみです。