施川ユウキ『オンノジ』、絶望と希望と、御の字の未来

『サナギさん』の施川ユウキ先生です。これは今年の最高傑作になるかもしれません。それくらいすごいマンガでした。

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突然、人がいなくなった世界。ひとり残された、記憶のない少女・ミヤコ。ああ、なんというシリアスSF! でもこれは施川ユウキのマンガです。故に常にギャグ。誰もいない、止まった世界でひとり、ミヤコはただひたすらに面白いことを考え、行動し続けます。

まず、この序盤のネームづくりができる時点で、この人は天才としか言いようがありません。誰もいないし、何も起こらない世界で、ひとりの少女が面白いことをしたりしゃべったり妄想したり、という4コマが延々と。こんなマンガがどうして描けるんだろう?

途中、元人間の少年だったフラミンゴが登場して、ふたりで生活するようになってから徐々に物語は別の展開へと転がっていきます。タイトルにもなっている「御の字」というモチーフをそのままフラミンゴの名前にしてしまって、ミヤコとオンノジの生活は続きます。世界は止まったままで、何も起きません。誰もいません。ふたりだけ。ふと我にかえるとそこには絶望しか無くて、それでもふたりはなぜか日々を面白おかしく過ごしてしまいます。

中盤でオンノジがいなくなってしまったと思い込んだミヤコは、戻ってきたオンノジをびっくりさせるためだけに「結婚しよう」と告げ、今度は「夫婦ごっこ」の物語が始まります。さらに、終盤で卵が登場して、そこから物語はラストへと流れ込んでいきます。止まった世界で、誰もいないのに、変わっていくのです。世界が終わっても、変化していくふたりは、美しく、愛らしく、そして恐ろしい。

くだらないことを言いながら笑って、ふと立ち止まるとやっぱり世界は終わっている。それでも物語は移ろい、未来が生まれる。これは絶望と希望のシュールギャグ4コママンガです。御の字の未来を見つけるまで、走り続けましょう。笑いながら。

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