イ・チャンドン『ポエトリー アグネスの詩』/ラース・フォン・トリアー『メランコリア』/絶望と美

時よ止まれ、お前は美しい。

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http://poetry-shi.jp/
交野市melancholia

絶望に美を見出してしまうのは、多分、罪深いことなのだと思います。

イ・チャンドンの『ポエトリー アグネスの詩』は、初老の女性ミジャの絶望的な現実が見せる詩のお話です。美しい言葉を求めて詩の教室に通い始めるミジャは、孫が同級生の少女の自殺に関わっていると知り、しかし示談金を用意する当てはなく、八方ふさがりになります。それでも「美しい詩を紡ぐために、世界を見つめよ」と習ったミジャは、自殺した少女アグネスの足跡を辿ります。自らに降りかかる不幸を利用して理不尽な現実に決着をつけた末に、ミジャがアグネスを見つけ紡いだ詩はとても美しく、それ故、見ている者は世界の理不尽さに絶望します。

ラース・フォン・トリアーの『メランコリア』は、監督の鬱病時代が生んだ世界の終わりのお話です。一般的な意味で極めて幸福な結婚式においてメランコリーに襲われ奇行に走るジャスティンは、結果として夫と職を失い、自らをコントロールできなくなります。ところが、惑星メランコリアが地球に接近するに従って、周りの普通の人々が不安と恐怖に怯えるのとは対照的に、心の平静を取り戻していきます。世界の終わりという絶望を目の前にして誰よりも冷静に終わりを迎えるジャスティンと、迫り来る惑星メランコリアの姿はとても美しく、それ故、見ている者は世界の理不尽さに絶望します。

2本とも、とても美しい映画でした。