シギサワカヤ『さよならさよなら、またあした』が描く幸せな日々に涙をこぼす

シギサワさん最高傑作じゃないですかねコレ。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4403621295/

……読み終わってあまりにも動揺しているのでうまく文章を書く自信がありません。

シギサワカヤさん(d:id:ktos_sb)は、僕がこよなく愛するマンガ家さんのひとりで、そりゃあもう『ファム・ファタル』とか『誰にも言えない』とか大好きです大好きです! で、まあ、今作は新書館から出ている「ウィングス」という女性向けの雑誌に掲載された短編連作を1冊にまとめたもので、シギサワさんにしては珍しく表紙で服を着ています珍しい! 短編連作といってますが、すべてのお話はちゃんとつながっていて、でも時系列的にはぐちゃぐちゃです。

心臓疾患を抱え、生まれて間もなく余命20年と宣告された少女と、何かに失敗して、無気力なまま地方の女子校に赴任してきた教師。ノストラダムスが世界を滅ぼす前に、あるいは、自分が死んでしまう前に、恋くらいは、結婚くらいはしたいなあ。そうやって物語は始まります。

儚げな表紙や、シリアスな作品紹介とは裏腹に、作品全体を貫くトーンは底抜けに明るく、まさにシギサワ節としか言いようのない空気を作り出しています。あっさりと20歳を超えても生き延びてしまった少女の、病的な(あるいは躁状態とでも言うべき)明るさは、ちゃんと最後の1ページまで貫き通されます。大丈夫、悲しいお話じゃないよ。こんなにも幸せなお話、久しぶりに見ましたよ! …………はぁ。

シギサワさんの真骨頂は「目」だと思うんです。特に女性の「目」。こう、薄く開いた、切れ長の目。目は雄弁にものを語る。目にやられるよね。最後の見開き、彼女の目は本当に力強く、美しい。だから「前だと信じた方向へ進むしか道はない」。そうですよね。その通りだと思います。

この作品は希望に満ちた、とても幸せなお話です。

『さよならさよなら、またあした』(2011年11月下旬発売) - シギサワカヤBlog
さよならさよなら、また明日/シギサワカヤ(冒頭が少しだけ読めます)