久慈光久『狼の口』が凄惨すぎるけど逆襲のターンが来そうなので燃える

この戦いが終わったら女将さんと結婚するんだ……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

だが仕置き執行。

狼の口 ヴォルフスムント 1巻 (BEAM COMIX) | 久慈光久 |本 | 通販 | Amazon

いま最も面白いマンガの1つは、Fellows!で連載されている久慈光久さんの『狼の口 ヴォルフスムント』だと思うんですよ。で、ついに3巻が出ましたよ! いよいよ森林同盟三邦のターンですよ奥さん。

このマンガの舞台は14世紀アルプス。シュヴァイツ、ウンターヴァルデン、ウーリの森林同盟三邦から成る盟約者団(後のスイス連邦)と、三邦を占領し峠の権益を奪ったオーストリア公ハプスブルク家との戦いを描いています。ハプスブルク家は独立を目指す三邦を封鎖し、外界との接触を断ちます。外界との唯一の通り道に建てられた、三邦の人間を通さぬための関所「狼の口(ヴォルフスムント)」と、そこで反乱分子を徹底的にあぶり出し弾圧する代官「ヴォルフラム」。関所を越えんとする三邦の人々とヴォルフラムとの凄惨な攻防が、この物語の中核を成しています。

狼の口 ヴォルフスムント 2巻 (ビームコミックス) | 久慈光久 |本 | 通販 | Amazon

普通、マンガなら、関所は越えてなんぼですよね。壁とは打ち破られるものなわけですよ。でもこのマンガはそんなの気にしない。1巻から2巻にかけて「関所を通れずに殺されていく三邦の人々」を徹底的に描きます。本当にひどい。読んでて滅入ってきます。高潔でカッコいい兄ちゃんとか、可愛くて気高い女の子とかが独立のために狼の口に挑むわけです。でも死ぬ。バシバシ殺されます。無惨です。まったく救いがなく、よくぞここまで徹底的に描けるなと驚嘆します。毎回登場する人たちがみんな(良い意味でも悪い意味でも)魅力的だから困る。もっとこの人たちの物語を読んでいたい! だが仕置き執行。

またヴォルフラムのキャラクターがイカしています。いつもニコニコ。でも目が笑ってない。明らかに反乱分子を処刑することに大して愉悦を感じています。「こいつはくせえッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!」ってなもんです。やだ、ヴォルフラムさんったらドSなんだから……。

狼の口 ヴォルフスムント 3巻 (ビームコミックス) | 久慈光久 |本 | 通販 | Amazon

しかし3巻でようやく、三邦側が逆襲ですよ。かの有名な伝説の偉人ヴィルヘルム・テル(ウィリアム・テル)の息子ヴァルターが関所の砦に挑みます。さすがです! シビれました! ここまでの緊張感あふれる知能戦も良かったですが、3巻のヴァルターとヒルデの戦いっぷりは鳥肌もの。さてさて、果たして史実通りモルガルテンの戦いへとたどり着けるか否か、今後も楽しみです。

それにしてもFellows!は『狼の口』をはじめ、『乙嫁語り』『ジゼル・アラン』『兎の角』と名作を立て続けに生み出していますね。いやあ素晴らしい。

http://www.enterbrain.co.jp/fellows/