富田克也『サウダーヂ』が壮絶すぎてどうしていいか分からない話

『サウダーヂ』がヤバいです。

富田克也監督作品 映画『サウダーヂ』 空族制作

富田克也監督による、甲府に生きる人々を描いた、あまりにも生々しい映像世界。キャッチコピーは「土方、移民、HIPHOP」!!!

表層的には(少なくとも中盤くらいまでは)バカバカしい、笑える話です。劇場でも度々、笑いが起きました。でも、多くの登場人物が、がキツい現実を背負いながら、そのキツさから抜け出せずにゆっくりと首を絞められていくような展開をするため、はっきり言って「乾いた笑いをあげるしかない」だけです。そのどうしようもなさ、どこへも行けなさは、どんなにタフに生きても抜け出せない無限回廊のごとし。僕は見ていて絶望しました。ドキュメンタリーよりもリアルな物語です。恐ろしい。

『ウィンターズ・ボーン』で描かれたタフに生きる主人公の少女の希望と絶望には、それでも美しさがありました。こっちはもう、どうしようもない。土塊にまみれて、どうしろっていうんだ、と叫び出したくなります。タフに生きることで見える希望すら存在しない!

ただ、それでも、「土方」サイドの中心人物である精司の真っ黒になった肉体にはある種の美が宿っているし、タイ帰りで飄々としている保坂=ビンの生き方には憧れのようなものを覚えなくもありません。「移民」サイドのブラジル人たちはみな必死で生きているし、「HIPHOP」サイドで徐々に壊れていく猛の悲鳴のようなラップはまさしくゲットーミュージックで痺れます。すべて滑稽だし、絶望しかないのに、どうしてそれが美しく見えてしまうのでしょう。きっと、僕も途中から頭がヤラレチャッタんでしょう。そうでもなければ直視できないのです。よーし、おじさんカポエイラ始めちゃうぞー。