饒舌な静寂。町田洋『惑星9の休日』

僕は毎月、今月はどんなマンガが出るだろうとひととおりチェックをしています。その過程で、表紙を見て一目惚れして購入リストに入れる、いわゆる「表紙買い」をよくします。当たることもあれば、外れることもあります。

本作もそのようにして目に留まった作品です。当たりでした。大当たりでした。

新人・町田洋。ググってみると、本人のサイトと思しきページと、そこからリンクされている電脳マヴォのページくらいしか情報が無い。

自身のwebサイトでひっそりと漫画を公開していた町田洋さん。 電脳マヴォ「タレこみメールフォーム」に推薦状が送らて来たことがきっかけで掲載に至りました。

電脳マヴォ:町田洋 町田洋

で、公開されていた「夜とコンクリート」があまりにも素晴らしかったので、これは間違い無いと購入に至ったのでした。

電脳マヴォ:町田洋 町田洋

描き下ろし単行本デビュー作となる本作『惑星9の休日』は、辺境の星である惑星9の日常を切り取った8つの短編から成ります。永久影の中で凍り付いた女性を見続ける青年、貴重な映画フィルムを巡るトラブル、玉虫色の男の夢、月が離れる日に語られる思い出話、科学者の恋、散歩者の夢想、停電とドタバタと土曜午後二時の横断歩道、大女優の里帰り……。

短いものもあれば長いものもあって、可愛い女の子が出てくる話があればおっさんしかいない話もあって、ストレートなSFやラブい話があれば夢がそのままマンガになったかのような話もあって……新人とは思えないほどにバリエーションが豊富で、そのどれもが静かに胸を打ちます。特に、映画フィルムを巡る「UTOPIA」と、夢の中のような不思議な質感の「ある散歩者の夢想」(タイトルの元ネタはルソー?)が出色の出来。また、最後のエピソード「灯」のラストの見開きは鳥肌が立ちました。お見事。

※8月12日 追記:特設ページができていました! 1話がまるごと読めます。涼しげなページデザイン良いですね。

惑星9の休日

帯には絵本作家のたむらしげるさんの推薦文。作者はたむらさんの影響を受けているそうですたしかにどこか「絵本」の肌触りに近い。

ひとつひとつの言葉の選び方がまた秀逸で、すべて引用したいくらいです。電脳マヴォの方でも今後も作品を発表するようですし、とても期待しています。

つまり虫人間であろうと
君を愛してるってことさ

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