世界とは音楽である。オラ・シモンソン、ヨハネス・シェルネ・ニルソン『サウンド・オブ・ノイズ』

この世界は音楽に満ちあふれている。それに気付けるかどうかだけなのだ。

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本作は、2001年に制作され世界各国の映画祭の短編部門を騒がせたショートムービー『Music for One Apartment and Six Drummers』を、あらためて長編映画として発展させた作品です。

身の回りのありとあらゆる物質を“楽器”に見立てて演奏する6人のドラマー。本作『サウンド・オブ・ノイズ』では、このコンセプトをベースに、音楽一家に生まれながら音楽が大嫌いな刑事アマデウスが、彼ら6人の「音楽テロ」を防ぐべく追うというストーリーに仕立て上げられています。この「音楽嫌いの刑事」と「音楽で世界を変えようとする6人」の関係性は、単純な対立に終わらず、次第に不思議な融和を見せます。なぜなら両者とも、権威ある「立派な音楽」を壊したいと思っているからです。

6人は4つの楽章を街中で“演奏”します。病院の手術室で手術用具と患者を使って演奏し、銀行で紙幣をシュレッダーにかけながら判子を叩き、クラシックコンサートの会場の外でブルドーザーを奏で、高圧電線にぶら下がって音符となって音を轟かせます。彼らは、世界を音楽に塗り替えます。身の周りのありとあらゆるものは音楽を奏でるための楽器であり続けるのです。

アマデウスにとって、それは地獄でしかありません。ところが、途中でアマデウスは不思議な現象に気付きます。彼らが楽器にしたものの音が、アマデウスには一切、聴こえなくなったのです。この不思議な現象は、最初は犯人の足跡を追う手がかりに、そしてやがて、アマデウスを救済する福音として機能します。

6人のリーダー格サナを人質に、電流を流した高圧電線による演奏を迫るアマデウス。やがて街のすべてに彼らの演奏が電気信号として響き渡ります。その結果、この街のありとあらゆる音楽が、アマデウスには「聴こえなくなります」。静寂を手に入れたアマデウスは、無音のクラシックコンサートで、人々の息づかいや衣擦れの音、アクセサリーの触れ合う音に耳をすませ……そうして物語は幕を閉じます。ああ、これぞまさしく「4分33秒」に他ならないではないか。

そう。6人は彼らなりの音楽によって世界を塗り替えようとしました。そして、アマデウスはそれを利用し、世界を6人の(そして彼自身の)音楽で満たすことで、世界を変え、静寂を手に入れます。その上で、映画を見終えた我々は気付くのです。塗り替えるまでもなく、そして静寂が訪れてもなお、最初から最後まで「世界とは音楽そのものであった」という事実に。

この映画は、音楽の自由さを最大限まで表現したアート・パフォーミングであり、音楽嫌いの刑事と風変わりな音楽家たちの愉快なクライム・ムービーであると同時に、世界こそが音楽であるという端的な事実を叩き付ける、この世の理を描いた映像作品なのです。

……とか小難しいことを考えず、彼らの演奏に聴き惚れましょう。ELECTRIC LOVE!