人生にはいろいろある。ウディ・アレン『ローマでアモーレ』

愛すべき、ウディ・アレンの最高のコメディ。

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バルセロナ、ロンドン、パリと旅を続けてきたウディ・アレンが辿り着いたのは、永遠の都ローマ。監督&脚本はもちろん、久々に出演もしています。原題『To Rome with love』から考えると随分ずっこけな邦題ですが、見終えた後ではすっかり納得。愛らしくて、素晴らしい、ウディ・アレンによる最高のB級映画でした。

ローマを舞台に、4つの物語が同時に進んでいきます。それぞれの物語はまったく交わりません。それでいてひとつひとつは濃厚で、普通の監督だったらそれぞれ1本ずつ映画を撮るでしょう。しかも構成がとんでもなくて、あるエピソードは1日の出来事だけれど、あるエピソードは恐らく何ヶ月も経過している……それを少しずつ別のエピソードと行ったり来たりしながら展開します。

とにかくひたすらコメディです。正直、頭から終わりまで笑いっぱなしでした。特に役者としてのアレンは相変わらず最高。また、ひとつひとつのエピソードの「ずれ方」も秀逸です。例えば、娘が旅先のローマで恋に落ちて婚約したというから両親もローマにやってきたというエピソードのメインストーリーは「相手側の父親がシャワーを浴びているときだけ美声で歌うのでデビューさせよう」です。くるってる。

終盤、あるひとつのエピソードに登場している、正直なんの脈絡も無く画面に映り続ける、ちょっとメタっぽい人物が、こんなセリフを言います。

「人生にはいろいろある」

4つのエピソードは、この言葉に集約されます。娘が婚約したっていうから来てみたら相手の父親が美声だったのでデビューさせちゃうこともある。妻と実業界に挨拶に行こうとしたけど妻が出かけたすきにコールガールが何かの手違いで来ちゃって(ペネロペ・クルス最高でしたね!)そのまま妻ということにして話を進めたり、その妻は大ファンの俳優とホテルに行ってしまった上になぜかそこに強盗がやってきちゃったりすることもある。彼女の友人と恋に落ちていくけれど最後の最後でどんでん返しが起きることもある。ある日突然、何の意味も無く有名人になってしまうこともある。

人生にはいろいろある。アレンのフィルムには、そのことを強く感じさせるだけの説得力があります。そして、底抜けに笑えるのです。人生のように。