ガレキのバンドの歌。電気グルーヴ『人間と動物』

人間と動物(初回生産限定盤)(DVD付)

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『J-POP』『YELLOW』『20』という3連続アルバムリリースから少し時を経て、久々に電気グルーヴのアルバムが出ました。

肩が抜け過ぎです。もう過剰性とか必要ないじゃんという。でも何でもありではなくて、例えば『YELLOW』に収録されていたような、ほぼ石野卓球のソロ作のようなインスト・テクノトラック(Area Arenaとか。いや名曲ですけど!)は排除されていて、電子音の上で卓球と瀧が歌うポップソング集といった趣です。やはりこれは電気グルーヴであるとしか言いようがなさそうです。

あからさまな80's路線で収録時間も短めと聞いていたので少し心配していたのですが、聴いてみたらまったくもって傑作でした。すごく聴きやすい。たしかに『VOXXX』とか聴くと疲れるので1年に1回くらいでいいかなと思うけどこれは何回でも聴ける。

面白いのが歌詞。『J-POP』以降の、抽象度の高い無意味な歌詞ではあるのですが、ただ無意味なんじゃなくて、ぼんやりと意味っぽいものが見えるような見えないような……というバランスの取り方がさらに極まってきているように思います。「ガレキのバンドなんだろう?」だし「中身は無いでしょう/でも何かみんな歌うでしょう」ですよ。日本語ってすごい。

シャツがデカいというだけの歌「The Big Shirts」で始まって、シングル曲「Missing Beatz」「Shameful」を経て、ピッピピピーとか言い続ける謎ファンク「P」からの展開がすごい。めちゃくちゃメランコリックでベタなコード進行の「Slow Motion」、ザ・ドリフターズ「ドリフのほんとにほんとにご苦労さん」をサンプリングした「Prof. Radio」、なんかシングルver.よりイントロのカッコ良さが倍増している空中ブランコ「Upside Down」、タイトルからは想像もつかないくらいキレイな「Oyster (私は牡蠣になりたい)」……。ラストだけBPMが上がって、The Monkeesの「(I'm Not Your) Steppin' Stone」のカバーで〆。一連の曲の流れが素晴らしすぎて、スルスルーッと聴けてしまう。すごいよなあこれ。ダウンロード全盛、アルバムという単位が意味を消失しつつある時代に、しっかりアルバムという単位でモノを作れるのはさすがだと思います。アナログ盤も出すっていうんだからさらに驚き(しかもダウンロードコード付き! 今っぽい!)。ちなみに、iTunes Storeだとなんか曲順がおかしい気がしますね。

https://itunes.apple.com/jp/album/the-big-shirts/id602912051?i=602912352&uo=4&at=10lc52

https://itunes.apple.com/jp/album/slow-motion/id602912051?i=602912357&uo=4&at=10lc52

https://itunes.apple.com/jp/album/prof.-radio/id602912051?i=602912356&uo=4&at=10lc52

https://itunes.apple.com/jp/album/oyster-siha-mu-lininaritai/id602912051?i=602912359&uo=4&at=10lc52

何はともあれ、良いアルバムが聴けて僕は幸せです。ビバ動物! 来月にはアイデア編集部からデザインにフィーチャーした本も出るみたいだし、ツアーもあるし、楽しみですね。

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