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From The Inside

Ubique Media Daemon

庵野秀明『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』、絶望とエヴァの呪縛(ネタバレ注意)

ネタバレです。

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エヴァンゲリオン 公式サイト

うわあ、なんだか大変なことになっちゃったぞ。

序は徹底的にエンターテインメントで、破は徹底的にベタな希望を描いていました。破を見た後はそりゃあ僕も興奮して「ぽか波最高や!」とか言ってたわけです。

ヱヴァ破の話をもう少しだけ(ネタばれ) - From The Inside

僕は破のとき「14年の重み」という言い方をしました。テレビ版の1995年からから14年を経た2009年だからこそ、ベタな希望を描くことが許された、と。新劇場版は希望の物語であると。

で、Qですよ。えっ、本当に14年経ってた。マジか。

お年を召していないように見えるアスカさん(外見14歳で実は28歳)。外見が変わっていないのは「エヴァの呪縛」だといいます。うわああああああ14年間エヴァの呪縛でそのまんまってことかよおおおおおお。それなんて俺たち。これはひどい。さすが庵野! 俺たちにできない云々。

世界も自分もどうなったって構わない。あなたに代わりなどいない。僕は「あなた」を救いたい。そうやって救ったあと目が覚めたら、14年経っていて、みんな自分に冷たい目を向ける。救ったはずの「あなた」は今回も結局救えていなかったことが分かって、おまけに世界は自分の選択によって崩れ去っていた。自由意志による選択は失敗に終わり、惨劇だけが残された。この身に刻まれるは罪と罰。

それでも希望はあるとホモカヲルは言う。すべてをやり直せる道があるという。14年間眠っていた14歳の少年はそれにすがる。この槍を抜けばいいんだと暴走する。アスカさん(外見14歳で実は28歳)が「やめろガキシンジ」って言ったって止めやしない。28歳ならもうちょっとやり方があるんじゃないですかアスカさんと思うけどまあそんなもんだよね。

エヴァは徹底的なディスコミュニケーションの物語であったわけだけれど、今回ほどそれがひどい形で結実したことはなかったのではないでしょうか。崩れた世界で14年間戦い続けたミサトとアスカは、シンジ(=観客)から見るとひどいけど、そういう背景を考えることで理解できなくもない。故のディスコミュニケーション。ホモカヲルとのピアノの連弾と冬月おじいちゃんとの将棋が唯一の救いというひどい世界。

罪を負うのは辛い。自由意志による選択の責任は負わねばならない。でも罪を償うことすらできない。史上初めて苦悩の表情を見せたカヲルの心中やいかに。

キツいフィルムでした。序のエンターテインメントと、破の希望に震えたすべての観客をふるい落とさんとする庵野の意志を感じます。ああ、すごくエヴァっぽい。14年後の世界になっちゃって、ミサトさんは艦長になっちゃって、何もかも変わらずにはいられないけど、それ故に作品からどうしようもないほどの「エヴァっぽさ」がにじみ出ている。これを呪縛と呼ばずになんと呼ぶ。Q=急にして旧。最もエヴァから遠く離れ、そして最もエヴァに接近してしまったフィルム。

マリの鼻歌だけが、いつまでも耳に残る。呪縛なんぞ知ったことかという「外部」としての救い。呪縛に捕らわれた人々を、彼女はきっと馬鹿だにゃーくらいに思っていることでしょう。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||に、つづく。

以下どうでもいい雑感

  • 一般の評価がどうなるか分かんないけど、僕は抜群に面白かったと思っています。エヴァはこれでいいんだよ。ラスト楽しみです
  • 今作のシンジが破のシンジさんから昔のシンジ君に戻ってしまった的な見方もできるけど、Qのシンジの苦悩は自意識に悩まされるかつての苦悩ではなく、自らの自由意志による選択の落とし前をどうつけるか、変わってしまった世界と周りの人々に対してどう動くかという苦悩であって、すごく成長していると見ます
  • Qはシンジとカヲルがホモホモしいみたいなことは予想されていたし実際そうなんだけど、むしろQは濃厚な百合フィルムであると主張したい。もちろんマリとアスカです。「姫」と「コネメガネ」ですよ。何それ漲る。しかも次回予告では8+2号機ですよ!
  • テレビ放映時に中学生だった僕はQ視聴時にミサトさんと同い年だみたいに思ってたら時代が進んでしまってむしろアスカさんと同年代になってしまった。不思議な感覚です。でも今回のミサトさんもカッコ良かったしお美しかった。うん、大人としてはだいぶダメだったけれど。その辺も愛おしい
  • まさかトウジの妹とは……
  • 綾波は僕らのトラウマ「レイIII」そのもの。諸君らの愛したぽか波は死んだ! 何故だ!
  • 全然違う話に見えて、カヲルがセントラルドグマを下っていって「あれなんか違くね」みたいなところテレビ版そのまんまというか、何度やってもこうなるんだな感があってすごく良いですね。苦悩するカヲル君って新鮮で見ててゾクゾクしました
  • 「旧劇場版はレイ(=母)を拒絶してアスカ(=他者)と生きることを選択したシンジ=現実と向き合え的メッセージで終わったわけですが、そのあたりはどうするつもりなのか」ということを破のときに書いたわけですが、Q自体が圧倒的なまでの現実だったわけで、さあラストをどうするかという……いやほんとどうすんのかなこれ……
  • ラストシーン、赤い大地でアスカとシンジっていうのはもうトラウマしかないわけだけど、ちゃーんとアスカがシンジを蹴り飛ばしてくれて、綾波もいて、3人で歩き出すというのは、絶望しかないQの中で唯一の希望となり得た感じがします
  • エンディングの宇多田ヒカル新曲、良かったですねえ。事前に宇多田新曲だって知っちゃった人もったいないと思います。見終えたあとiPhoneからiTunes Storeで即買いました。歌詞聞いてると本当に辛い