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From The Inside

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阿部共実『空が灰色だから』2巻、止まらないお化け屋敷型ジェットコースター

こんなにたくさんの話したいことがある。

空が灰色だから 2 (少年チャンピオン・コミックス)

Amazon.co.jp: 空が灰色だから 2 (少年チャンピオン・コミックス): 阿部 共実: 本

2012年漫画界最大のサプライズにして空前の問題作『空が灰色だから』の2巻が出ましたよ奥さん!

自意識過剰でうまくいかない女の子たちのオムニバスストーリーという基本はそのままに、より多様なボールが前後左右からぶん投げられています。だいたいこの手の話は2巻目ともなると「ネタが割れる」ので退屈になりがちですが、作者自身もそれを意識しているのか、巧みに新しい球を織り交ぜてきます。

そもそも1巻の時点で「苦笑いコメディ」「ほのぼの良い話」「後味最悪の狂気話」「世にも奇妙型ホラー」「不条理ギャグ」を投げ分けてくる芸風で、読者は「このページをめくるとどうなるんだ」という緊張を常に強いられます。2巻ではこれらがさらに綯い交ぜになって、1冊を通して読んでいるとお化け屋敷型ジェットコースターに乗せられているような感覚に陥ります。

怖い話方面で良かったのは「こわいものみたさ」。非常に上質なホラーで、クライマックスの「とれちゃった」の破壊力は筆舌に尽くしがたいものがあります。何がとれちゃったんだろう。何がとれちゃったんだろう。

最高に素晴らしかったのが、新境地とも言うべき「こんなにたくさんの話したいことがある」。作者の言語感覚が最大限に発揮された名作です。聞き上手の城田さんが、いつもひとりでいる不破さんの話を聞くという物語。不破さんは常に多種多様な日本語を頭に流し込んでいる女の子で、話し始めると複数の話題が渾然一体となって混じり合ってしまいます。

すみません私 話したいことがありすぎてよくこのように話と話が混ざってしまうんです
要点をまとめられず脱線ばかりで意味もオチもないようなことを黄緑色に鋭く刺すように光る電源ランプしか装置されてない機械のように終わりなく話をしてしまうんです

こんなのだから1年生の時に気味悪がられて誰もいぶし銀より生え抜きの若手の白色はすぐになくなるから身内とテレビのお客さんは音楽で飾りのない日常を描いた
あっダメだダメダメだ
ダメですよね
気持ち悪いですよね

「気持ち悪いですよね」という不破さんに対し、城田さんは「ダメじゃないし気持ち悪くないよ」「溜め込んでいる話を聞かせてよ」と答えます。そこから見開きでの不破さんの言葉の数々! 素晴らしい。これは本当に素晴らしい!

そのほか、“表情”にまつわる静かなお話「金魚」(ラストシーンが完璧!)、何ひとつ救いのない青春野球漫画「信じていた」、完全に病気な「世界の中心」など、実に良いエピソードが多数収録されています。作者のネタ切れが怖いところではありますが、週刊少年チャンピオン本誌の方ではさらに新境地を開拓しつつあるので、まだまだ期待できそうです。

いま、最も面白い漫画の1つであり、恐らく2012年を代表する作品となるはずです。ぜひ読んでください。

空が灰色だから 第2巻 | 秋田書店
空が灰色だから 2巻 感想 阿部 共実 - 読書メーター
阿部共実『空が灰色だから』が描く自意識のダークサイド - From The Inside